Colaboの背景、不気味なネットワーク-行政が乗っ取られていた?

石井孝明
ジャーナリスト

炎上の続くColabo問題の騒ぎが、やむ気配はない。困窮女性の支援問題について検索して調べた。するとあまりにも闇が深く、唖然としてしまった。日本の福祉行政の一部が怪しげな人たちに乗っ取られているように思えた。

(イメージ)Colabo騒動は、背景がよく見えない不気味さがある(iStock/LightFieldStudios)

すでにネットで多くの情報が公開されているが、この記事ではそれを整理してみたい。

この問題は、スラップ訴訟を受けても頑張っているハンドルネーム暇空茜さんが調査し情報を公開している。また月刊Hanada3月号に池田良子さんが「仁藤夢乃と赤いネットワーク-弱者ビジネスの闇」、有本香さんが「「Colabo問題」疑惑の核心」という記事を書いていた。それらの記事の方が、できがよいので参考にしてほしい。

女性支援法がこの騒動の背景か

私は存在を知らなかったが、昨年5月に女性支援法という法律が成立した。生活困難な女性への行政支援を義務付けるものだ。この法律は、Colaboなど「女性支援の人権屋さん界隈」(仮に名付ける)の事業をしやすくする内容だった。

「人権屋さん界隈」は、この成立を目指し、一大イベントとして長い準備をしていたようだ。そして、同法を基礎に、自らが望む形での支援拡大を考えていたらしい。するとColabo騒動が始まった。あの人たちが、最初に異常な反発を批判者にしたのは、出鼻をくじかれるのを気にしたためかもしれない。

この法律を守ろうとすることが、騒動の隠れた本筋と思う。この動きについて特定の個人が絵図面を描いたのか、「人権屋さん界隈」の集合知でこうなったのかは分からない。ただしColabo代表の仁藤夢乃さんは界隈の「プリマドンナ」であっても、「脚本家」ではないと思う。かなりの知恵が必要で、彼女にはそれがなさそうだからだ。

利益を得る人で構成された厚労省の委員会

Colaboの仁藤さんは2018年の法案制定の検討当時から、厚生労働省の「困難な問題を抱える女性へのあり方に関する検討会」のメンバーだった。このメンバー(名簿)を検索してほしい。共産党の支援者や、過激派系の政治活動歴のある人がいる。

またこの問題を追及している人たちの間で「WBPC」という言葉が出ている。Colaboに加え、若草プロジェクト、ぱっぷす、BONDと、女性支援で公金の支援を受けている団体の名前の頭文字を取ったものだ。このメンバーにWBPCの関係者が揃っている。利害関係者が法案成立に関わっており、普通ならスキャンダル視されるだろう。

ちなみに若草プロジェクトは代表呼びかけ人に、元厚生労働事務次官の村木厚子さんを据えている。「人権屋さん界隈」は周到に準備をしてきたようだ。

政治家のColaboへの異常な支援−法案審議時間ゼロ

そして女性支援法をめぐる国会審議を見て驚いた。審議時間がゼロなのだ。厚生労働省が事実上起案したのだろうが、参議院の厚生労働委員会で議員提出法として22年4月12日に上程され、「全会一致」で委員会審議が行われず、13日に参議院本会議で可決してしまう。衆議院でも公明党の山本香苗参議院議員の主旨説明のみで、同年5月19日に本会議で可決した。あまりにも、いいかげんだ。

ちなみに同じ「人権屋さん界隈」が関与した、AV業界を大混乱させて評判の悪いAV新法も、全会一致だった。AV新法もこの法律も、自民党上川陽子衆議院議員、公明党山本香苗参議院議員、社民党福島瑞穂議員が、推進者として出てくる。

国会の審議議事録は公開されている。(国会会議録検索システム)そこでColaboを支援する発言をする政治家がたくさんいた。その中で、社会民主党の福島瑞穂参議院議員、立憲民主党の蓮舫参議院議員の例を示してみよう。福島議員はColabo、若草プロジェクト、BONDと法案成立で協力していたと明言した(22年4月12日、厚生労働委員会)。蓮舫議員は、GOTOトラベルで余った予算を「Colaboに使え」と21年3月19日の参議院予算委員会で言及していた。

ちなみに立憲民主党の打越さく良衆議院議員は、弁護士としてかつてColaboの監事だった。

ここまで野党議員の支援を受けるColaboと「人権屋さん界隈」の政治力に驚く。ただし界隈と政治家の関係の詳細、つまり献金などはネットでは完全に見通せなかった。なぜ政治家がここまで熱をあげるのか不明だ。野党は選挙で勝てないから個別論点で行政のハッキング(乗っ取り)をしているようだ。

公職にある委員たちの異様な経歴

そして上記の会議は「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」と名前を変え、仁藤さんを含めてメンバーの大半は残り続けた。

この有識者会議のメンバーの経歴は、非常に偏向している。メンバーのO弁護士は、ブント(共産主義者同盟)の元メンバーで極左の政治活動歴がある。元日本赤軍最高幹部の重信房子の弁護もしている。

国立大学名誉教授のKさんは「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」の共同代表。学生時代に政治運動への参加したことを公言していた。NPO代表のKさんはいわゆる「慰安婦問題」に関わる。共に、福島瑞穂議員の支援者だ。3人は前述の「WBPC」にも関与している。仁藤さんは日本共産党の選挙活動を支援している。

こうした人たちが、公金支出や政策に影響を与える公職にあることがおかしいし、それを許容している自民党政権も、厚労省も批判されるべきであろう。

変な人たちが目の届かないところで公金を使う

私の簡単な調査はここまでだが、呆れ、恐ろしくなった。審議会の中身までは議事録で精査していないし、関係者に取材もしていないが、やったらとんでもないことが出てきそうだ。

私は、自分の経済記者としての仕事でエネルギー、金融、税制、農業の審議会などをこれまで見てきた。経産、財務、農水各省の審議会は、関係業界、一般メディア、専門紙、そして利権が絡むために政治家が監視している。裏までは見通せないが、各省庁は表面的には、中立性に配慮をしている。政治家も、変な介入をすると叩かれるので、慎重に行動している。

今回、厚労省の審議会を初めて見た。そして驚き、異様さを感じた。中立性が疑われ、利害を持ち、過去に過激な政治活動をした人が審議会委員となり、法案作成に参加し、政策に影響を与えている。女性支援法をめぐっても、利害関係者の「人権屋さん界隈」が法案作成に関与し、堂々とそれを誇示していた。政治家も癒着していた。

福島議員の前出の発言「NPOの意見を聞いた」を思い出してほしい。エネルギー・原子力問題でもし自民党議員が国会で「電力会社の意見を聞いた」と言ったとしよう。朝日、毎日、東京の各紙が一週間発言を取り上げ、その議員は辞職に追い込まれかねないだろう。

検索すると、メディアは女性支援法のことを、成立時に短く伝えたのみだ。「人権屋さん界隈」は権力者なのに、誰にも監視されず好き勝手にやっている。

公金垂れ流しの仕組みに歯止めをかける

「人権屋さん界隈」と行政の関係はあまりにもおかしい。自民党・公明党は仕事をしろ、厚生労働省は中立性を保て、メディアやオンブズマンは「権力」を監視しろと言いたい。もちろん政治で対立ばかりをする必要はないが、立憲民主党、共産党、社民党や人権屋さんに好き勝手をさせるために、有権者は政権を取らせたわけではない。また厚労省の役人に、行政を白紙委任しているのではない。

困窮女性の救済は必要だし、こうした活動で救われる女性もいるだろう。しかし政治的中立性に疑問があるなら、いいかげんに扱うなら、その活動に公金を使わないでほしい。自分の稼いだ金で自由にやるべきだ。

経済記者として、日本の闇を全く知らなかった自分に恥ずかしくなった。知らないうちに、知らないところで、変な人たちによる、公金を使う変な仕組みができてしまっていた。それを恐ろしく感じる。こんな無駄遣いを続けるから日本は衰退していくのだ。

なんとかして、公金を吸い上げる仕組みを壊したい。それを壊す第一歩として、このおかしな話を私たち「普通の日本人」は注目し、批判していくべきだろう。

26 件のコメント

  1. ホケモン より:

    凄く分かりやすくていい記事ですが、公明党には期待できないですかね
    公明党はBONDプロジェクトとズブズブですから

  2. sagishi より:

    この界隈ではないですが、ある自治体のNPOにオリンピック企画で騙されました。2回です。そして企画費も払いません。団体の弁護士からは内容証明の恫喝 オンブズマン 自治体も何もしません。これが市民活動です。私はこの自治体では一切協力しません。詐欺市です。

  3. ポトス より:

    素晴らしい記事でした。

  4. Yoshi より:

    今全国津々浦々、56000以上のNPOがあるそうですが、これらを監督する人たちがいない、組織がない、誰も言い出さないことに問題があり、早々に動き出さないと手遅れになります。 まじめに地道に活動している人たちが馬鹿を見ます。  NPOと言えばなんかいいことしていると呑気に構えるのではなく、政治主導で体制つくりをしてほしい。 くだらない増税の検討をする暇があったら、ここに眠っているお金は10兆円からあるんだから。

  5. さかもともとこ より:

    ✕池田涼子
    ○池田良子

  6. K1 より:

    正しく政治家は仕事しろ、厚生労働省は中立を担保しろ。そのとうり!

  7. るー より:

    恥ずかしいという言葉で締めくくられた記事。私もネットで毎日この件を追いかけていて痛感している感情です。国民の無関心が育てたであろうこのスキームを、今もなお多くの無関心が包んで隠しています。今はまだ微風かもしれませんが、少しずつ伝えていきたいと思います。素晴らしい記事だと思いました。

  8. ジャンジュネ より:

    日本のマイナー左翼の伝統である「たかり」ですね。政権を取ろうともせず、政府を批判しながら金をせびっている人々は、それこそ民主主義の敵です。グレーに使われている女性支援事業の予算を子育てに回しましょう。

  9. より:

    オンブズマンには利益相反だからと言われたエピソードがありましたね

  10. 絹田 より:

    プロの記者の方から見ても、厚労省周りの昨今の動きはおかしいと言うことがわかり、改めて憤りが湧くとともに、他の省庁はここまでひどくないのだと、少し安心しました。わかりやすい記事をありがとうございました。

  11. きなこ より:

    わかりやすくて、本職は流石だとしみじみ思いました

  12. ひろ より:

    厚労省と財務省しかWatchしてませんが、両省ともかなり特殊な印象です。

    • ひろ より:

      プロパガンダを仕掛ける。科学的根拠なく非難する。天下り渡る先を増やすことに余念がなく公金を湯水の如く投入している。省益に誘導する歪んだ”有識者会議”、等。

    • ひろ より:

      300文字に収めているのに600文字を超えていると出てコメントできません。このサイト、バギーですね。

  13. 弓月瑠奈 より:

    自民党上川陽子衆議院議員、
    公明党山本香苗参議院議員、
    社民党福島瑞穂議員が
    立憲民主党の蓮舫参議院議員
    ちなみに立憲民主党の打越さく良衆議院議員
    に抗議を!

  14. より:

    プロの方から見てもやはり異様なのですね。
    問題とされている4団体の活動報告をネットで確認しましたが、量・質ともにあそこまでの予算を割くほどの活動に思えません。KPIもまともに設定されておらず、行政がチェックする気もないことに驚愕しています。
    さらには赤い羽根共同募金や休眠預金活動事業といったものまで腐敗が及んでいるようで、絶望的な気持ちになりました。

  15. パク より:

    日本人を舐めまくりだよな
    そもそも共産党が日本にある時点でおかしいんだよ
    ここまでなめられて黙ってる日本人は異常

  16. YSK より:

    非常にわかりやすくまとめられている記事であり、権利を監視しろというジャーナリズム精神を感じられました
    応援しますので、ぜひ関係者への直接取材を希望します
    困難だとは思いますが、記事の作成を続けて行ってほしいと思います

  17. みみみみ より:

    指定職である上級(?)公務員がやろうとおもえはここまでできてしまう例。

  18. 大久保 より:

    公明党じゃないのか。筋書き作っているのは。

  19. iwa より:

    検察は村木事件の時にクソみたいな思い込みで暴走したから厚労省の内部で何やってももう突っ込んでいけないし
    本当は凛の会みたいな厚労省周辺の怪しい団体をガンガン摘発していかないとならなかったのに完全敗北しちゃった

  20. AK より:

    「自民党・公明党しごとしろ」とあるが、この件の主犯はなにであるかの指摘も挙がっていましたよね。

  21. ただもの より:

    日本だけでなく、世界中がこのような状況であり、その状態こそが現代国家の正常な姿であると思います。つまり、奴隷制よりも巧妙な形で大衆を支配する制度を作り上げたが、それゆえに崩壊するか、それともテクノロジーを駆使した強権によって支配を続けるかという状態に達していると思います。言葉とそれによる技術が発展し、カネとマスコミができ、自然に手を加えて人を無償で養えなくなった結果、人を牢獄に入れてしまったのです。

  22. いちご団子 より:

    【AV新法も、全会一致だった】とありますが、旧NHK党の浜田聡参議院議員が反対されてます。
    そこは訂正と謝罪が必要かと
    今も国会議員の中でwbpc問題に取り組んでおられるのは浜田議員だけです。
    石井さんとはこれからも協力してやって貰いたいです。

  23. a より:

    人権 同和 男女共同参画
    この3ワードで検索するだけで大体の疑問は繋がる。

  24. aaa より:

    人権 同和 男女共同参画
    この3ワードで検索するだけで大体の疑問は繋がる。

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