安倍元首相は統一教会と関係はないー関係者の証言から

石井孝明
ジャーナリスト
安倍晋三氏facebookより

安倍元首相へのおかしな誹謗が続く

安倍晋三元首相と統一教会の関係を騒ぐ変な騒動が続いている。大した関係がないのに、騒ぎ続けることは、安倍氏の名誉を貶めるもので不快でおかしい。

そもそも、この一連の騒動を私は不思議に思っている。関係者から話を聞くと、安倍晋三氏は、統一教会とほぼ関係ない。

安倍氏の選挙区から4月22日投票の現在の補選で山口4区で出馬した、有田芳生氏は反統一教会を掲げて、安倍氏が統一協会と関係のあるかのような言説を繰り返している。

その有田氏本人が、2006年9月21日の自分のブログで、当時官房副長官だった安倍氏に対して、「1・北朝鮮と、関係の深い統一教会に関して、金融制裁を安倍氏が主導している」「2・安倍晋三氏は統一教会に対し、距離を置くだけではなく厳しい対応を取っている」と書いている。

取材で会った、アジア外交に関わった外務省の元幹部、経産省の元幹部、自民党担当の元記者から、安倍氏と統一教会の関係の話を聞いた。いずれも断片的なやや安倍氏から遠いところにいる人の情報で、すでにメディアに既出の情報もあるが、参考になると思うので書いてみよう。

岸信介と安倍晋太郎と統一教会には関係があった

安倍晋三氏の祖父と父が、統一教会に関係があったことは確かだ。しかし、べったりだったかは疑問だ。私は経済記者だが、駆け出しのころ国政、地方の選挙を取材した。選挙事務所を見ればわかるが、いろんな利害団体が、いろんな思惑を秘めて与野党問わず、候補者によってくる。統一教会もその一つだろう。

「安倍さんの祖父の岸信介や父の安倍晋太郎は、1970年代まで統一教会が母体になった勝共連合を「反共」の担い手、韓国の北朝鮮からの防波堤としてみて、活用しようとしていたと思う。韓国は、朴正煕の後、政治状況が混乱したので、勝共連合・統一教会は外交の一つのカードだった。ただ朴正煕は、娘と違って韓国の宗教界を非合理と嫌い、その後の韓国の歴代政権への統一教会の食い込みはそれほどでもなかった。岸も、安倍晋太郎も、1980年代以降は、それほど重視しなくなった」(元外交官)

「清和会(現・安倍派)の代表だった元首相の福田赳夫さんは台湾とのパイプが強かった。福田さんの政治的ライバルの大平正芳さんが日中国交回復を外務大臣として行い、中共政権と関係があった。それへの対抗意識があった。それで自然と勝共連合と清和会の関係が強まった。今回の騒動で、統一教会の関係がある議員として安倍派議員の名前が多かったのはそれが理由だろう。しかし安倍晋三さんと、統一教会の関係は聞いたことがない」(同)

安倍晋三氏は統一教会との関係を、父、祖父から受け継がなかった

安倍晋三氏が統一教会と関係があると、聞いた人は誰も思っていなかった。80年代後半から統一教会の違法な献金などが社会問題になったが、当時安倍氏は、新人議員で、選挙活動に忙しく、統一教会を巡る騒動で名前は出てこなかった。

「安倍晋太郎が通産大臣から、外務大臣に代わる1982年ごろ、安倍晋三さんが父親の秘書になった。当時、支援団体や選挙、派閥問題は古い秘書が仕切ってて、安倍晋三さんはそういうのも苦手そうだし、政務を一生懸命、勉強していた。統一教会と安倍父子の関係など、80年代に話題にもならなかった。そもそも88年にリクルート事件があって安倍晋太郎が巻き込まれ、91年に彼はガンで亡くなったから、統一教会のことを安倍父子が考える余裕はなかっただろう」(元経産官僚)

「安倍さんは1990年代は新人議員のドブ板選挙をやっていた。自民党も野党に転落したりと大変だった。安倍さんの母親、岸信介の娘の洋子さんは岸を尊敬しているものの、その周りの取り巻き、ダーティーな満州人脈とか政治屋人脈を嫌って寄せ付けなかった。安倍さんも影響を受けたのか古い関係を使わず、特定勢力と結び付かず「冷たい」と言われていた。安倍さんは、岸や父親の人脈より、自分で選挙区をよく回り、自ら関係を作った地元の財界とか、地域の人々には好かれていた。それが選挙に強かった理由だ。選挙で統一教会の人が目立った動きをしたと聞いたこともない。関係はなかったようだ」(政治記者)

安倍晋三氏は、来るものは拒まずの態度で統一教会と付き合った

安倍氏は統一教会について、積極的に支援もしなかったが、支持は拒まない。政治家にありがちな、そんな態度だったようだ。テロ犯と批判者は、統一教会系の団体に、ビデオメッセージを送ったことを問題する。それは統一教会そのものの会合ではない。ポンペイオ元米国務長官なども出席し、国連NGOの資格をとった統一教会関係団体のアジア・太平洋外交のシンポジウムだ。それ以外に統一教会との関係は見つかっていない。

「安倍さんは一回、事務所が統一教会系の団体のイベントに、2003年の官房副長官の時代に祝電を送った。批判を受けてその時聞いたら、「送ったことを私は本当に知らなかった。秘書を注意した」と言っていた。以後関係はなかったようだ。ただ、政治家で支持してくれる人を切り捨てる人はいないので、来るものは拒(こば)まずだったようだ。日本会議には関係があったが、統一教会の関係は見えなかった」(政治記者)

「安倍さんは人気があったし、人事権を持ってたが、力関係は状況によって変わった。衆議院の群馬1区の公認が揉めた。中曽根康隆氏が2018年に出馬するので、ここを地盤にした尾身朝子議員と公認を争った。安倍さんは、経産省出身の故・尾身幸次議員の娘さんで、安倍派の尾身朝子さんの公認維持を求めた。しかし中曽根氏に公認を取られ、尾身さんは北関東ブロック選出に転出してしまった。勝共連合系団体が、中曽根氏の支援活動を行い、名簿集めなどに協力したと聞いている。また統一教会は北朝鮮との融和に冷戦後に転換したが、安倍さんは北に厳しかった。つまり統一教会は、安倍氏の意向とは違う動きをすることもあった」(政治記者、元経産官僚)

(注・中曽根康隆氏が統一教会系という意味ではない。彼らは勝手に支援をする。ただ祖父の元首相中曽根康弘氏は反共で知られ、勝共連合との関係が深く、選挙で支持を受けていた。)

統一教会と安倍晋三氏の深い関係は確認できず

統一教会と自民党の関係は一部にあった。某元大臣のように、シンポジウム出席のため統一教会の経費で何度も海外旅行したり、某自民党議員のように教祖の妻を「お母様」と呼んでいたのは不気味だ。

ただし、法律や社会常識の範囲において、人が何をしようと、宗教団体が何をしようと自由だと私は思う。私も統一教会を警戒する。しかし特定宗教団体を過剰に攻撃する動きの方が不気味に思う。それは私たちの民主主義、内心の自由、言論の自由を傷つけかねない。

そもそも、統一教会に政治的、社会的力はあるのだろうか。この前、同教会が政府の解散命令の審査を批判して集めた署名の総数がわずか2万7000筆だったという。統一教会は私も気味悪い団体と思うが、よく知らない。霊感商法などは批判されるべきだが、今は異様さは薄らぎ、国内の信者の実数は6万人程度とされる。大きな存在とは思えない。

私は生前、安倍氏は政治家として外交は見事だったが、内政は何もしなかったと批判的だった。特に熱い支持もしなかった。しかし殺されたことが悲しく、気の毒すぎる。その死を冒涜する人は、正義感から許せず不快だ。統一教会問題で安倍氏が脇が甘かったということは言えるが、それでテロに遭うことは筋違いだし、政治家としての安倍氏の業績を否定されるべきほどの行為でもない。カルト規制は、安倍内閣の時に強化された。

そして、そもそも安倍さんと、統一教会の関係はほとんどない。いくら探しても、密接な関係を裏付ける話はない。安倍氏と統一教会の関係を強調する変な騒動は安倍氏の名誉を傷つける不当なもので、事実ではなく、不快であり、嘘であり、社会全体を傷つけていく危険なものだ。

この騒動を終わりにしようではないか。馬鹿馬鹿しいし、いまだに亡くなった安倍氏の誹謗を繰り返し「ツボガー」と騒ぐ人は情報弱者か、ストーカー的な異常者だろう。

そして、普通の日本人は繰り返しているが、異様な一部の日本人は脳裏にない、人間として当たり前のことを言って、この文章を終えたい。安倍晋三さんの非業の死を悲しみ、冥福を心からお祈りする。

石井孝明

経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

1 件のコメント

  1. 石川謙 より:

    SNSを通じて多くの安倍一族批判を読んで来ましたが、どれも感情的であり一方的な内容でした。今回の石井様の立ち位置は別にして、非常に客観性が感じられて分かりやすかったです。

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