外国人トラブル、埼玉県川口市の現状(下)日本人の優しさが利用される

石井孝明
ジャーナリスト

(上)暴走運転による命の危険」から続く

ゴミ問題で日本人が逃げる

(写真11)蕨駅前で、夜にクルド人の集まる通りで、朝にパチンコ店の開店を待つ人々

J R京浜東北線の蕨駅前の状況をみた。クルド人がたむろし問題になっている。ただ取材に訪れた休日の朝には、クルド人の姿はなく、賭博場であるパチンコ店の開業前に日本人の行列ができ、たむろする日本人がタバコのポイ捨てを平気でしていた。日本人のマナーも良くない。

西川口駅周辺を、朝に訪問するとゴミが散乱していた。これは日本のどの繁華街でも見られる光景で、外国人だけが悪いわけではない。しかし周辺は、異国語の看板だらけだった。ここは違法風俗店が多かったが、それを警察と市が10年ほど前に摘発で一掃すると、空きビルに中国人が住んだり、事務所にしたり、料理店を作った。

(写真12)西川口駅隣の飲食店街。「ゴミは捨てないでください」という中国語、韓国語、トルコ語、韓国語、英語で書かれた垂れ幕と、ゴミの山。

アジアの都市の市場のように、店先で魚介類をさばく中国系料理店がある。衛生、廃棄物の処理、匂いで問題になる。保健所が摘発しても、また出てくる。「観光地としてこの混沌を面白がる声がある一方、日本人の事業所が、駅前では減っています」と奥富議員は話した。都市経営での「割れ窓理論」、つまり割れ窓などの街の汚れが増えるほど、比例して犯罪が増えるという考えを思い出した。また欧米で、移民により住民が逃げ出し、街がスラムになる「ドーナツ化」という現象が多発していることも頭に浮かんだ。もちろん、外国人が住むことによって、空室は埋まるメリットもある。

一方で、金を持つ中国人もいる。西川口駅西口の駅前のビルが売りに出された。中国系企業が目的不明で購入を試みたが、それを知った市が購入した。

(写真13)中国人が購入を試みた、西川口駅西口にあるビル。周囲は外国語の看板だらけだ。

状況が改善された芝園団地

川口市の芝園団地を訪問した。ここは1970年代に県とUR(都市公団)が巨大団地を建設した。ところが住民の高齢化による死亡や転出が続き、空室を中国人が埋めた。今の住人5000人のうち、半数が中国人になった。少し離れた大きな公園から蝉が消えたことで、口コミにより、全国で話題になった。幼虫を中国人が掘って食べたからだ。

ゴミや騒音などのトラブルが絶えない「荒れた」団地。ネット上には、こんな書き込みがある。ところが今の芝園団地は清潔で、静かだった。

(写真14)きれいになった芝園団地(川口市)。

「住民自治会、事務局が頑張ったからです」と奥富議員は説明した。中国人の自治活動への参加、ゴミ出しなど生活ルールの周知を行い、団地も改造してきれいにした。もちろん日本人に溶け込まない中国人もいるが、大半の行動は変化し、近隣の苦情はまだあるがだいぶ減った。住民の取り組みで、外国人と協調して居住した成功例に、この団地がなるかもしれない。また中国人は、子どもに学習をさせ、地元に同化していく。

埼玉県には外国人と共生してきた歴史がある

ちなみに、埼玉南部地域には中国人の他に、ネパール人、インド人、ベトナム人、フィリピン人そして前から住む韓国・朝鮮人の民族グループがいる。韓国・朝鮮人は主に戦前からいる韓国人の子孫で、60年前にはトラブルがあったが、今はほぼ日本と同化した。逆にクルド人の行動に怒り、一部の人は「町を守ろう」という動きに参加している。

その他の民族集団は、ゴミ出しの問題があるが、それほど大きなトラブルになっていない。日本は世界基準に比べて、異様に住民のゴミの仕分けや管理は厳しいようで街も清潔だ。その厳しさについては、私も外国人は大変だと思う。

インド人は料理人、東京やさいたま市に出勤するホワイトカラー層がいる。ベトナム人、フィリピン人は、技能実習・特定技能制度の外国人労働制度の枠内にいる工場労働者が多い。ネパール人は都内のインド・ネパール料理屋に勤務する。いずれも、日本人とは協調的だ。もちろん、なじまない人もいる。

印象に残ったのは、クルド人と他の民族集団の違いだ。彼らは日本の歴史の中で、中東からの珍しい移民集団だ。イスラム圏からはインドネシア、マレーシアと日本は深い結びつきがあるが、ここまでのトラブルはなかった。

クルド人は集団で集まり、現地に同化せず、警察など公権力には集団で集まって騒ぐなど対抗意識を燃やし、そして閉鎖的だ。

これが山岳遊牧民のクルド族の社会の特徴なのか、イスラムの特徴なのか、またクルド族の中の特定の人々の特徴なのかは、分からない。日本のクルド人の集団は、トルコ南東部の都市化の遅れた特定地域の人間が中心で、経済移民のためリーダーがいなくて混沌としているという分析がトルコで出ているという。そこから先は、私も追えていない。

30年前の欧州と同じ状況が埼玉に発生

クルド人は国を持たない民族として知られる。イラクで自治区を作り、シリアで武装勢力がIS(イスラム国)との戦いの中で米国などの支援で勢力圏を作っている。その支援で、トルコのクルド系武装勢力は力を増し、テロ活動を活発化している。トルコ政府は、その治安戦を強化している。私たち日本人がそうした中東の紛争に巻き込まれる必要はない。クルド人に安易に協力すると、その紛争に巻き込まれ、中東における日本の友好国であるトルコとの関係を傷つけてしまう。昨年12月には、フランスで極右の放火でクルド人が2人死亡した。すると激昂したクルド人のデモが過激化し、パリで放火、投石、警官への暴行が行われる暴動になった。

欧州での移民トラブルは、イスラム系移民、日本に少ないアフリカ系移民を中心に発生している。「西洋の自死」(2018年、東洋経済)という英国人ジャーナリストの、移民による各国の混乱を紹介した本が世界的ベストセラーになった。

埼玉県南部ではこれまで示したように、次の状況が起きている。外国人集団と住民との間にトラブルが発生し、その集団への批判や住民の困惑は、「差別だ」「人権侵害だ」の人権活動家と左派政党、同調者の声にかき消される。対策作りは、そういうおかしな活動家によって妨害される。メディアのマイナス面の報道は皆無だ。そして行政の対応も、政治家の動きも鈍い。警察は、その取り締まりにためらいを示している。

この状況は、前述の本の示した30年前に移民をめぐって西欧諸国で起きた状況とそっくりだ。30年後の今、古い西欧諸国の社会秩序は崩壊し、欧州は人種・移民問題をめぐり混乱している。ここまで状況を悪化させたのは、欧州諸国の20世紀初頭までの植民地支配の罪悪感、移民側の政治集団の策謀、欧州のリベラルや左翼政党、メディアや無能な専門家の善意に満ちた間抜けさがあったと、この本では指摘していた。この背景も日本によく似ている。

良くも悪くも、埼玉県南部では日本の未来が始まっている。日本でこれから移民は増える。それによる社会の変化は、プラスとマイナスの様々な動きをはらみながら、着実に日本社会を変えていく。私は、今の欧州と同じように、マイナスの変化の方が多いように思える。

そして欧州と違う日本の危険なところは、日本人は、良くも悪くも、外国人との付き合いに慣れず、優しく寛容な人が多いことだ。それを利用する外国人がいるだろう。

素行不良外国人への厳格な法適用を−川口市会議員奥富氏との対話

(写真15)川口市議会議員、奥富精一氏。

私が見た限り、川口市では、外国人による住民への迷惑行為が多すぎた。そして外国人に気を配る川口市民の優しさも印象に残った。私は日本人としてその「日本人らしさ」は誇りだが、金目当て、自分のためだけにくる異文化の人は、そうした日本人の善意を理解していなさそうだ。

奥富議員は、一緒に街を歩くと「奥富さん」と、支持者の住民から頻繁に声がかかる、地元に根差した政治家だった。奥富議員の主張は、川口市民の声でもあろう。

「私の主張は当たり前のことです。どのような外国人政策を市や県や国が行う場合にも、大前提として素行の悪い外国人による不法行為への徹底的な法適用を行うこと。そして各外国人が迷惑行為の是正を自発的に行い、居住者としての責任を果たすように要求することです。ところがこの当たり前ができていない。みんなで、外国人問題で、見たくないものを見ないで放置してきた。それが大問題になって川口市民を苦しめています。ここは外国人に寛容な優しい人の多い街なのに、おかしすぎます」。

昨年末に「第二次川口市多文化共生指針」が公表された。川口市の政策方針が示されているが、今起こっている外国人と住民のトラブル、外国人の違法行為については1行も書いていない。外国人の居住実態の調査もない。外国人の責任も住み方も書いていない。ただし「行政と日本人がするべきこと」は長々と書いてある。「私は別の問題に関わり、この指針を見落としました。それは私の怠慢で、お詫び申し上げます。明らかにおかしい指針で、改正を求めるつもりです。外国人にも、川口市民としての責任を負ってもらうべきです」。

市議会で、埼玉の政治の場で、徹底的な警察と行政による素行の悪い外国人の取り締まりを主張するのは奥富氏しかいない。「どの政党の議員からも、私の主張は強い批判を受けません。内心ではみんな同意しているのかもしれませんが動かない。そして動けない。外国人問題は、政治的にも、社会的にも、タブーになっています」。

「日本人が外国人に合わせる必要はない」

奥富議員は市外に住む人から主張に「差別だ」と頻繁にSNSなどで批判を受ける。こうした批判が、政治や行政、警察の動きを萎縮させるのだろう。差別主義者という大きなくくりの批判は現状分析と冷静な議論を止めてしまう。

「私は外国人差別や、ヘイトスピーチを強く批判します。私は在日韓国人、在日フィリピン人の友人が多く、私の政治活動を応援してくれる人もいます。彼らも川口市民として、素行の悪い外国人に困っています。現実を知ってほしいです」。

「入管法が改正されたら、犯罪を起こすと難民申請ができなくなり、また審査の回数が制限され繰り返し難民申請をして日本に在留をすることは難しくなります。速やかな改正法の成立と、粛々とした法の執行を求めます」

奥富議員は日本各地での外国人対策の事例を学び、芝園団地の良い方向への変化も見ている。それでも次の考えを持つ。

「私はこれまで地域社会での外国人との共生を考え、取り組んできました。それは無理と、考えを変えました。日本人との共生に関心がない外国人が多いのです。また日本人が外国人に無理に合わせる政策が正しいのか、疑問を持ちます。『和せず、同ぜず』、つまり外国人に日本人が無理に合わせる必要はないし、非協力的な外国人に日本人が何かをする必要もないと考えます。川口に住みたい外国人を拒みませんが、日本人に協力しない外国人に無理に住んでもらう必要はない。共生を外国人政策の政策目標にする必要はありません」。

私も奥富議員の考えに同意する。外国人と住民とのトラブルは、今後、日本中に広がる。問題が深刻になる前に、どの立場の人も、埼玉県南部の現状を知り、自分の住む街の防衛を考えるべきだ。

また私は日本経済のための労働力確保策として、多様性拡大のため、移民を増やすべきと考えていた。しかし、その準備は日本の行政に全くできていないと、川口市の現状を見て感じた。これは日本で働いていただく外国人にも不幸だ。社会混乱を引き起こす今の移民推進策は止めるべきと思う。

石井孝明

経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

7 件のコメント

  1. 母屋 より:

    キューポラのある街角から、キツイ労働や色街は多国籍に
    https://pin.it/2beCxK0

  2. 入管法改正に賛成 より:

    「多文化共生」という言葉の本質は、分断と暴力の街にしましょう、ということ。
    異なる文化や宗教、風習、言語を持つ人たちが数多く集まれば、当然その境界では価値観の違いから軋轢が生まれる。
    その軋轢は憎悪を生み、暴力へと繋がり、分断を加速させ、その結果何も決められない政治が出来上がる。※例:レバノン
    民主主義国家のその姿を見た中国などの独裁国家は「やはり民主主義は未熟だ」と人民に誇らしく語るだろうし、世界中で独裁・専制国家が増える流れになると予想する。
    「多文化共生」は社会を破壊する政策なのは間違いなく、可能な限り「他文化離生」が最も安定する社会だと思う。

  3. ぴょん太 より:

    注意喚起ありがとうございます。わが町にもアジア系とは違う外国の方々を多く見受けられます。音量大にして車を走らせる程度ですが、迷惑行為ではあります(何語かわからない曲でした)。小さいことから始まるのかもと思いました。

  4. 京都在住、外国人観光公害に悩みつつ より:

    大音量で音楽を聴きながら走る車、暴走行為をしながらエンジンマフラーの音を響き渡らせクラクションをら鳴らし走る迷惑行為をする日本人の若者、決して特定人種の行為では有りません。教育と社会環境を整備し、話合う機会を作り相互理解を深めて論理的に納得出来る多文化共生社会が出来る様に努力を継続する事が大変なのは解りますがグローバル経済社会の世界的拡がりの中ではカナダのモザイクカントリーの努力を参考にしつつ、日本が国際化の中で独自文化を築き上げるしか、無いのでは無いかと言うのが今の私の意見です。カナダも40年前から苦労しつつ少しずつ前進している様に見ていて思います。日本も諦めず努力してはどうでしょうか。

  5. ヘイト法=・侵略工作と言います より:

    何か言うとヘイト法で即逮捕(まだ厳罰化になってないLGBTQも)
    なので政治家は何も出来なくなる
    天皇制廃止・学生運動・ロウソク革命・軍事侵略……こういう奴ら(彼らの本国は?)
    議論が出来ないから
    表向きは存在しない
    技能実習制度とか言う意味不明なものになる

    クルド人とか他を理由に認めると(人権屋・サヨク・アムネスティは悪利用する)
    隣国から山のように押し寄せて日本終了
    欧米とは分断が大騒ぎになると
    世界中で戦争している癖に何をやっているのやら……

  6. 最後は軍頼み…… より:

    労働力対策には機械化を
    面倒事は全て機械にやって貰えばいいかなと……

    李承晩・金日成(欧米・国連で反日を拡大)
    サヨク・朝鮮学校・統一教会とかが
    私達は日本の味方です
    米軍や自衛隊はいらないぞ(ヘイト法や外国人参政権……)
    韓国なんか捨るべきだ(どれだけ被害を受ければ理解する)

  7. ニガー より:

    トルコ系クルド人は政治難民なんかじゃない ただの本国でも悪の輩 奴らには日本では居場所はない。ドイツにでも追放すればいい。スグ徒党を組むクルド人が清掃作業笑う日本人は平和ボケしてるのでスグ優しさを前面に出そうとする警察も警棒でボコボコに殴る位じゃないと警察も民主日本に遠慮してる

母屋 へ返信する コメントをキャンセル

YouTube

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

最近のコメント

過去の記事