国葬儀での長い列、国民に愛された安倍元首相

石井孝明
ジャーナリスト

安倍晋三元首相の国葬儀が9月27日にあった。平日だったが、筆者は時間を作り正午から午後2時半ごろまで周辺を歩いた。メディアや政治集団が伝える混乱した情景とは全く違った。人々が集まり、誠実に祈りを捧げていた。

【写真1】道路越しにみた安倍氏の遺影と献花台
【写真1】道路越しにみた安倍氏の遺影と献花台

動員された少数が騒ぐのみ、影響なし

【図】国葬の関係場所と列(赤い矢印)
【図】国葬の関係場所と列(赤い矢印)

ネット報道を散見すると、メディアは反対派のデモばかりを写し、騒然としていたと印象を受けるだろう。しかしそれは実情に反する。葬儀場周辺は安倍氏の冥福を静かに祈る人たちばかりで、静かだった。サイレント・マジョリティである「普通の日本人」と、ノイジー・マイノリティであるメディアや政治集団との落差を感じるものだった。

私は地下鉄半蔵門線の九段下駅で降りた。国葬儀は東京都千代田区の日本武道館で行われた。(地図①)。献花台は九段坂公園に置かれた。(地図②)献花の列には並ばなかった。それが数キロになっていたとネット情報があったからだ。

靖国通り(地図③)(都道302号線)が、靖国神社と会場まで通っているが、車道は封鎖されていた。デモは私がいた時間に何度か九段下交差点(地図④)にきた。過激派や労働運動のセクトごとに来るらしい。一つは日本共産党系の「全教」(全日本教職員組合)の幟(のぼり)を立て、50人ぐらいの集団だが、高齢者ばかりで静かに去っていった。

もう一つの集団は、崩れた格好と雰囲気の中年の男性らで、大型マイクに大音量でドラム連打の音と「国葬やめろ」と喚いていた。それは40人ぐらいだった。ところが、交差点近くに集まっていた政治団体や普通の人の「帰れ」コールが始まり、そちらの数の方が多かった。周りで数百人がスマホで写真を撮っていた。警官が大量にいて、その騒擾集団と普通の人の間に入っていたために、暴力沙汰はなかった。国葬儀、献花会場と九段下交差点の距離は離れ、騒音は届かなかった。警察は意図して、安倍氏の死を悼む献花の人の列と反対側でデモをさせていたようだ。警察の警備は大量動員と準備で混乱なく、また市民の権利を威圧せず行われていたように思う。

九段下周辺には、高齢者の小集団がいた。腕章や幟で私が見たのは、共産党系の全教、立憲民主党系の「日教組」などだった。彼らの大半は国会前で抗議集会をしていたので、そちらに行ったのだろう。メディアは、こうした団体が動員されていることを伝えなかった。

静かに冥福を祈る人たち、混乱なし

【写真2】靖国神社前で国葬儀会場に向け哀悼の気持ちを示す人たち
【写真2】靖国神社前で国葬儀会場に向け哀悼の気持ちを示す人たち

私は反対側の車の隙間から献花台を見た。安倍氏の冥福を祈った。そして午後2時に国葬が始まると、靖国神社大鳥居前(地図⑤)に、喪服など着た人が数百人集まり、葬儀の行われている武道館に向かって手を合わせ、ネット中継を見るなどして、静かに礼儀正しく弔意を示していた。私はこうした人たちの純粋な気持ちに感動したし、私と同じ思いの人がいることにうれしくなった。

献花の列は延々と続いていた。若い人ばかりではなく、さまざまな年齢の男女が来ていた。地下鉄半蔵門駅から帰ったが、その駅前から四谷駅の方向に列が伸びていた。(図の列のスタート時点)人々のSNSでの証言を集めると、列は上記図の赤線のようになり、午後9時ごろまで人の列が絶えなかったという。千鳥ヶ淵公園では人を収容するために列を蛇行させていた。また自民党は献花台を党本部前に急遽設置して、そこに行くなどして途中で離脱する人も多かったようだ。集まった数万人の人は、礼儀正しく並んでいた。トラブルなどは私の見る限りなかったし、実際に事件があったとの報告もない。集まった人の質の高さに感銘を受けた。

列の長さを地図上で調べると7キロ以上になる。政府は、国葬の献花者数を2万5889人、国葬参加者数を4183人と発表した。私はこの人通りを考えると、その数字はかなり少ないように思う。警察は50メートルの列を100人と計算すると、かつて警察取材の際に聞いた。また列は4列だった。それを考えると軽く10万人を超える。

一方で、日本共産党や立憲民主党、極左暴力集団などは、国会前に集まり、午後2時の国葬開始と同時に、音を立てて奇声を上げていたという。(地図⑥)葬儀に反対でも、それを妨害するのは、人倫に反する異様な人たちだ。ただし、その異様な行動と音は、国葬の現場にも、献花者にも届かなかった無駄で滑稽なものであった。

ネット上で国会前の国葬反対デモの参加人数は数百人と推計されている。しかし極左暴力集団などが関与するその主催者発表だと1万5000人という滑稽な状況だ。組織の命令で動員され、おそらく日当の出る労働組合や政党のデモが実数「数百人」。自発的に集まった国民が「2万5000人以上、私の感覚で10万人以上」。動員数の差を競うのは幼稚なことかもしれないがその大きな差を見ると、国民の大勢の意思は明らかだ。東京の人口は日本の10分の1に過ぎない。全国で安倍氏の冥福を祈る人がいただろう。

ただし、国葬儀を伝える報道はおかしかった。上空には報道ヘリが旋回していたが、延々と並ぶ献花をする人の映像はあまり出ていない。また反対デモの参加者数を1万5000人と、検証もなく垂れ流した。朝日新聞は27日午前中の記事で、集まった一般人について「100メートル以上の列」と見出しにした。列の長さは「7キロ以上」だ。嘘をつかないでほしい。

NHKはニュースで、安保法制で騒いだシールズにいたという28歳の女性を出演させ安倍首相を批判させていた。この女性は、ダラダラ毎日Twitterをしていており、就業しているのかさえわからない。こんな人は当然、日本の20代の代表ではないし、そう扱ったら若者が怒るだろう。

以上をまとめると、安倍氏の国葬儀では「少数の変な人」たちが、騒いでいたに過ぎない。日本の現実は、どうも日本人にも世界にも歪められて、一部政治勢力やメディアによって伝えられている。

国葬儀に参加した、「普通の日本人」の健全さに安堵

国葬儀では、菅義偉前首相の追悼演説が心を打った。(【全文】安倍元首相「国葬」 菅前首相 追悼の辞 | NHK)その中で集まった人たちについて言及していた。

「安倍総理…ご覧になれますか。武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです。明日を担う若者たちが、大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。総理、あなたは、今日よりも、明日の方が良くなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという、強い信念を持ち、毎日、毎日、国民に語りかけておられた。」

安倍氏の盟友である麻生太郎元首相も、2日発言した。「何時間かけて、ずっと若い人が並んで立っている。それが国葬における現場であって、その人たちの声がなんで新聞やマスコミには載らんのですか。人から強制されたわけでもなんでもない国葬というのがある。(中略)私は正直何とも言えない気持ちになった。本当に立ち止まってお辞儀をしてしまったのが正直な実感。そういった日本人が今、若い人たちのなかに育ちつつある。そういった意味で、若い人のなかに希望が見える、そう確信して日本の政治に取り組んで参りたい」

私は暗殺で殺された安倍氏の死を悼む。しかし安倍氏を生前特に強く支持したわけではない。外交・安全保障政策は素晴らしいと思う。しかし内政では目立った改革を首相主導で行わなかった。国葬も必要があったか疑問だ。しかし、彼の考えた、より良き日本を作るという姿勢には共感した。そして菅、麻生両氏の発言に全面的に同意する。

普通の日本人は、政治的考えの違いはあっても、安倍氏の努力を評価し、その死を悲しみ哀悼していた。そうした人が作る日本の健全な姿を、安倍晋三氏の国葬儀で確認できてホッとした。普通の日本人は安倍氏の死を悼み、立場を超えて前向きに安倍氏の希望したようにより良い日本社会を建設しようとしている。私のできることはささやかだが、こうした動きに加わり、その中で自分の仕事として、記者として事実を伝え、動きを支援したいと心に思った。

そして、日本を貶め発展を妨害し、普通の日本人の活動を邪魔し、マイナスの情報しか拡散しない、「ノイジーマイノリティ」の騒ぐ姿に、またうんざりした。この人たちは、国葬儀に参加した「普通の日本人」の姿をなんとも思わず、その妨害と安倍氏や自分の意見の合わない人の誹謗に精を出す。気味の悪い人たちだ。言っても無駄だろうが、少しは日本と社会のためになることをしてほしい。

2 件のコメント

  1. しろみ より:

    本当に偏向報道や切り取り報道には辟易します。左派や妙な団体の言う事は増幅させて報道するくせに、日本の為に動いている人達の事は矮小化する。これが報道各社のやる事なのでしょうか。プライドは何処に捨てたのでしょう。

  2. Toshizo より:

    参加しました。
    あの日のことを思い出すと、今でも目頭が熱くなります。
    (写真2に私が写っていました ご褒美ですかね)

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