初音ミクがマンガ攻撃に利用された?−赤い羽根のColabo支援の闇

石井孝明
ジャーナリスト
(写真)初音ミクを使った「赤い羽根共同募金」のための創作を呼びかけるサイト。(千葉県共同募金会)クリエイターたちがミクを題材に作る作品の質は毎年高い。キャラへの愛情のためだろうか。それがマンガ文化攻撃に間接的に使われている。赤い羽根の担当者は反省してほしい

Colabo騒動は終わる気配が見えない。今度は日本人に馴染み深い「赤い羽根共同募金」との関係が取り沙汰されている。Colaboとその周辺には、女性を描写するマンガを過剰攻撃する表現規制派が多い。赤い羽根募金は美少女キャラクターの代表格「初音ミク」を使って募金を集めているが、そうしたColaboを支援していた。この姿は異常で「笑えない笑い話」だ。Colabo問題は広がりすぎているが、その問題に絞ってまとめた。

Colabo界隈のマンガ描写への敵意

赤い羽根共同募金を運営する中央共同募金会は1月10日に声明を出した。(「中央共同募金会による一般社団法人Colabo等への助成について」)それによると全国で行う赤い羽根募金ではなく、同会が独自に集めた寄付から(一般人にはどうでもいい区別だが)、Colaboに合計2680万円を18年度から20年度まで、女性救済活動に使うバスの購入費用などに助成したという。

Colaboは女性救済を活動の名目にする団体だ。しかしそれ以外に、政治行動が目立つ。その一つが表現規制の問題だ。代表理事の仁藤夢乃氏とその協力者が、女性描写をめぐる過激な表現規制を主張し、自分の気にいらない描写への攻撃を繰り返している。同団体の公金利用について疑問を示し、民事訴訟をされているハンドルネーム「暇空茜」氏は、「温泉むすめ」という地域振興のための女性マンガキャラクターを代表が攻撃したことから、この団体をおかしいと調べ始めたという。暇空氏を訴えた弁護団の神原元弁護士は「萌え絵は燃やしてもいい」と発言し、その映像が拡散して批判されている。Colaboと密接な関係のある日本共産党も、表現への介入に積極的だ。

マンガでの過激な性描写は、一般社会に大量に流布することは問題だし、一定数いる不快に思う人に配慮すべきと、私は思う。しかし、その規制を公権力が介入する形で過剰に進め、また他人の表現を規制することは大変危険だ。表現の萎縮や自由な情報の流通、それによるマンガ文化の衰退につながりかねないためだ。

マンガは日本の誇るべき文化で、人々の精神生活を豊かにし、経済効果もある。その自由な流通の方が、規制よりもはるかにメリットが大きい。マンガ・アニメとITが融合し、女性、男性を問わず、各年代の人に愛されるボーカロイド初音ミクはその文化の産んだ素晴らしいキャラクターだ。私も好きだ。マンガ・アニメにとどまらず、音楽やCGを含めた創造の世界を作り上げている。

赤い羽根募金と初音ミクの協力に期待したが…

赤い羽根共同募金は「支えあうココロ、未来へ。」というプロジェクトを2011年から行っている。初音ミクを使い赤い羽根募金をテーマにした、楽曲、ポスターの創作を毎年募集している。ミクを開発したクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が、この目的でのキャラクターの使用を認めた。採用されたクリエイターへの報酬は原則賞状だけだ。それなのに、ミクへの愛情からか、かなり質の高いポスター、フィギュア、曲が提供されてきた。

この募金は、地域の助け合い、そして若い世代の参加も目的にしている。日本のマンガ・アニメ文化の力でそれが達成できるかもしれないと、私はこのキャンペーンを応援した。

赤い羽根、マンガ文化を攻撃する人を支援

ところが、その赤い羽根共同募金の運営団体は、Colaboとその取り巻きのような日本のマンガ文化を攻撃する人たちの活動を支援していた。初音ミクを使ってお金を集めているのに、そうした少女の描写を攻撃する人にお金を出していたのだ。これは明らかにおかしい。

以下はColabo代表のツイートだ。男性を「キモい」と連呼。主語が大きすぎる。誰も聞いていないのに「自分は買われた」こと、おそらく売春をしたことを意味しているのだろうが、わざわざ社会に告知している。

また以下は前出の「温泉むすめ」をめぐる代表のツイートだ。町おこしで女性のセクシーさを少し強調した立て看板を過剰に批判している。不快に思う意見は認めるが、ここまで攻撃する必要があると思えない。またマンガを現地の人が集客のためにセクシーさを強調して加工しただけなのに、マンガそのものを攻撃している。そしてなぜか初音ミクを、この人たちは攻撃しない。

この団体の女性救済活動の効果も疑問だ。以下はその代表が18歳を想定する深夜徘徊少女に送るものツイッター上に掲載し、前出の「暇空茜」氏がコメントしたものだ。コンドームや化粧品など、その深夜徘徊を助長するものを送っている。少女を救済するならその行為を止めさせるべきだし、暇空茜氏が指摘するように、こんなことに税金や寄付金が使われたくはない。

人の金をいいかげんに使うな

中央共同募金会は、こうしたColaboの活動を寄付金を支払って支えた。つまり、これまでの情報をまとめれば、「美少女キャラ初音ミクを使って集められた善意の募金が、美少女キャラを使うマンガを攻撃したり、夜遊び道具やコンドームを配布したりするColaboの活動を支えている」ということになる。

これは協力したすべての人が想定していない募金の使い方だ。それどころか困っている人のために寄付をした、協力した人々の善意を踏みにじり、侮辱する行為だ。赤い羽根の活動をする中の人は、人の金だからその使い方がいいかげんなのだろうが、こうした行為はやめてほしい。それとも担当者は、「騙してやった」と、暗い笑いを浮かべているのだろうか。

赤い羽根募金は、学校や自治会などを通じて、半強制的に集められる面もある。駅前には強制的に動員された小中学生が秋になると募金を呼びかける。そうした人たちも、自分のお金がこのような使われることを想像していないはずだ。これは右や左の政治立場の問題ではなく、善意とその利用、お金の正当な使い方をめぐる問題である。

赤い羽根募金に貯金を提供し、駅前で「ご協力お願いします」と声を張り上げ、初音ミクが好きな10代の純情な少年が、「コンドームのプレゼント」を見たらどのように思うのだろう。

このColabo騒動は、Colaboという団体それ自体に多くの問題があると思う。しかし、それに税金や寄付金など、人の金を提供する都庁の役人、寄付金を提供する社会団体も問題で、私はうんざりしている。そして、いわゆる左派が社会に張り巡らしたネットワークの広さ、お金を集める仕組みの根深さに怖くなっている。どれほど税金や善意が吸い取られてきたのだろう。

私は赤い羽根に二度と募金しない

これは初音ミクのファンと関わる人すべてへの侮辱であり、騙しうちである。できれば「赤い羽根共同募金」の担当者は、初音ミクと、赤い羽根募金のために一生懸命創作物を作り、無償で提供したクリエイター、クリプトン社、募金者に謝ってほしい。

また、これまで私が赤い羽根に募金したのは2000円ぐらいだろうか。初音ミクのポスターにひかれて募金箱の前に行き、100円を投じたこともある。抗議の意味を込めて、この募金に二度とお金を出すことはない。

3 件のコメント

  1. 淳乃壱 より:

    いつも分かり易い記事をありがとうございます。

  2. 雪波蔵馬 より:

    ブックオフで初音ミクのフィギュアを買おうと思ったけど、
    これを見て一旦保留にする事にしました。

    • 石井孝明 石井孝明 より:

      いやいや、赤い羽根とのリンク事業と、赤い羽根が問題で、初音ミクに罪はない

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