Colaboの闇、困難女性支援法の怖い中身

石井孝明
ジャーナリスト
(イメージ)生活困難な女性を救わなければならない。しかし、その大義名分の影には…(iStock/FeodoraChiosea

記事「Colaboの背景、不気味なネットワーク-行政が乗っ取られていた?」で、私は仮称「女性支援の人権屋さん界隈」が公金を吸い取る「仕組み」を作り上げようとしており、その周到な計画と行政の乗っ取りが、多くの国民の知らないうちに行われて、怖くなったと書いた。その「仕掛け」の一つ「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下困難女性支援法)を読んでみた。施行は24年4月だ。

以下の事実は、この問題を取り上げた「暇空茜」さんなどがすでにたどり着いている。それらの調査を見てほしい。ただし記者の経験から、問題を整理し、どのような危うさがあるかを指摘することには、多少の意味があるだろう。

審議ゼロで決まった困難女性支援法、内容は危険

困難女性支援法は、昨年(22年)5月に審議時間ゼロ、全会一致で決まった異様な法律だ。この法律は、いわゆる「理念法」、つまり「基本理念を定め、具体的な規制や罰則については特に規定していない法律」だ。一見すると正しいことが書かれているが、突き詰めると問題が多い。

「ヘイトスピーチ法」という理念法が2016年できた。その後、日本共産党や人権活動家が、気に入らない主張を「ヘイト」とレッテル貼りして、あちこちで騒いでいる。法律が曖昧だから濫用された。また、これを根拠にして、より規制を強化しようという政治運動も続いている。この困難女性支援法でも、「人権屋さん界隈」は同じ手法を使おうとしているようだ。

法律の中身はツッコミどころが満載だ。審議ゼロという国会の怠慢は大変な問題だ。

第1条「目的」では、「女性が女性であることから困難な状況に遭う」から女性救済の法律を作るとする。第2条「定義」では対象者は「困難な問題を抱える女性」とする。これらの規定は違和感がある。目的と対象が曖昧だ。日本は男女平等(憲法14条)であり、男性を逆差別していないだろうか。しかも女性の自立を促しながら(3条)、公的・民間支援の拡大を義務付ける(14条)という矛盾した内容をはらんでいる。

第9条は、すでに各地にある女性支援センターの設置の義務づけ、第13条は「民間団体との協業」、第15条は官民の「支援調整会議」を義務付ける。「人権屋さん界隈」のロビイングと運動の成果だろう。人権屋さんの(「ビジネス」といったら怒られるだろうが)「活動」は、国の制度の中にこの法律で組み込まれた。公金を全国の自治体に使わせる大義名分ができた。

「人権屋」の目指す危険な世界

「人権屋さん界隈」は、この法律を作った後で、何をしようとしていたのか。

この法律は、公金の支援を受けるNPOの若草プロジェクト、BOND、ぱっぷす、Colabo、の通称「WBPC」のメンバーが成立に関わった。利害関係がある人々で、それは問題だ。そして成立後も、それらの関係者がメンバーになる「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」で政策が議論されている。膨大すぎて全部読んでいないが、今騒ぎを起こしているColabo代表の仁藤夢乃さんが意見書をまとめていたので、彼女の考えは知ることができた。「人権屋さん界隈」も、同じ方向だろう。

私の「ツッコミ」コメントとともに整理して紹介してみよう。

1・仁藤さんは、行政のヒアリング対象に、性売買経験者当事者ネットワーク灯火(とうか)と、NPO法人国立夢ファームのE代表を勧めた。
(コメント)この灯火という団体は仁藤さんが運営に参加している団体のようだ。またE代表は、極左の団体「ブント」(共産主義者同盟)活動に頻繁に参加し、その構成員のようだ。仁藤さんは、自分と偏向した仲間の影響力の拡大を狙っていると、思わざるを得ない。

2・仁藤さんは「相談や支援は、自立を目的とせず、生活や人権保障を目的とすること」を求めた。
(コメント)困難女性支援法は目的で女性の「自立」と「依存と支援」が両方書かれる矛盾したものだった。仁藤さんらは法律の趣旨を変え、永続して支援を受けさせることを事業の目的にしているとしか思えない。これは女性の幸せにもつながらないだろう。

3・仁藤さんは「予算をつけてほしい」「強制力(中略)やらない自治体が出てくるのでやらせる」ことを求めた。
(コメント)つまり人権屋さん界隈の「ビジネス」の機会を、全国に、国の強制力を使って広げようとしていると、勘繰ってしまう。

4・仁藤さんは、児童相談所の持つ少女を保護委託する権限を、新法の下に置くことを求めている。
(コメント)これは「人権屋さん界隈」の権限を拡大し、公的機関を統制に置くことを求めていると受け止められかねないだろう。

以上の内容を見ると、仁藤さんは、この法律を起点にして、行政への影響力を増し、各自治体に揺さぶりをかけ、実際に、お金の流れる仕組みを作り上げていこうとした。

この仕組みを「ネオ同和」という人がいた。(示現舎記事「【Colabo問題】“ネオ同和” 東京都若年 女性支援事業に マスコミが 肩入れする理由」)過去に被差別部落救済の行政支援事業の一部が利権化し、それをめぐって自民党系、旧社会党系、共産党系の団体が争ってしまった。そして本当に差別に苦しんだ人の救済が適切に行われたのか疑問な状況になってしまった。私は一致とは思わないが、似ている面があるとは思う。日本の政治の闇の深さを感じる。

支援で本当に「生活困難少女」が救われるのか

これで困窮する少女が救われるなら、少しは公金支出の意味がある。しかし、どうもそれが疑問に思える。

(写真)2012年版、映画「レ・ミゼラブル」の「生活困難少女」のコゼット

私は生活困難で深夜徘徊する少女が周辺に全くいない。そのために「生活困難な少女」と聞くと、映画・ミュージカルの「レ・ミゼラブル」のヒロイン「コゼット」のように、悪い大人にいじめられる、か弱い少女を想像してしまった。

(写真)暇空茜氏のツイートとColaboの救う「生活困難少女」

現実は違った。この問題を追及している暇空茜氏がColaboの文章を引用していた。Colaboが救っている少女はこうした写真の人たちだった。日本では大半の機種で10万円以上、月数万円の通信費がかかるスマホを持ち、だらしない派手な格好をして、金髪に染め、日焼け、化粧をしていた。夜遊びに出かけるようだ。贅沢な悩みだ。同団体は深夜徘徊少女に、新宿などで食事、コンドームや化粧品を配っていることを事業の柱にしているという。

申し訳ないが、この写真の少女らの外見から、気の毒さを感じなかった。事情があるのかもしれないが、それを理由に深夜徘徊や夜遊びをするべきではない。さまざまな困難に直面しても、頑張って真面目に生活して深夜徘徊をしない10代の少女はたくさんいる。悪い境遇からの別の脱出方法はある。そうした私の感想は、右、左の政治的立場に関わらず、「普通の」日本国民が共有するものだろう。Colaboの少女救済の方向と方法は、明らかに間違っている。

「「コゼット」を救う必要がある」という私の勝手な思い込みは滑稽だ。しかし真の貧困がほぼない日本では、同じような勘違いをした笑えない人が多いのではないか。この写真を世間に出して、寄付を求めるColaboの空気の読めなさにも呆れた。ここで取り上げた「困難女性支援法」がこうしたお金の使われ方の道具になるというのなら、それは拒否したい。それどころか、法律を潰してほしい。

公的委員会から関係者を辞任させることが第一歩

Colabo騒動で不快なのは、一貫して仁藤さんやWBPCの「人権屋さん界隈」の人から、税金を使うことについて、納税者への感謝と責任感を感じられないことだ。ただし直せと言っても直らなそうだし、自分が変だとも思っていないようだ。

それならば仕方がない。岸田文雄首相は27日の参院本会議の代表質問で、「(東京都監査事務局がColaboについて都に命じた)再調査結果などを踏まえて必要な対応を行いたい」と述べた。この発言は行政を拘束し、同団体は対行政で何らかの責任を取らされるだろう。

厚労省と各自治体は、首相が「必要な対応」と明言した以上、必ずそれを実行してほしい。困難女性の救済行政について、ここまで不信感を招いたのだから、中立性を保つために以下のことをしなければいけない。正確で透明な会計処理が行われるまで公金の支出を止めること、「人権屋さん界隈」を法案・条例の制定や運用にかかわらせないこと、審議会のメンバーを全員辞任させ入れ替えることは、最低でもする必要がある。そして可能であるならば、女性困難支援法と関係の法令を見直すべきだ。「人権屋さん界隈」の人たちは自分の信じる女性救済活動を、やるなら自由に、自分で金を集め、自己責任でやってほしい。それならば誰も文句は言わない。

このままだと、私たちの税金が「困難女性支援法」を道具にして、少女の夜遊びをうながすことに使われてしまう。そんな結末を望む人はいないはずだ。国は増税を検討しているが、その前にやるべき歳出削減策はたくさんある。

6 件のコメント

  1. いかのおばせ より:

    不自然なほど都庁がcolaboに肩入れし、黒塗り書類メール破棄を繰り返す。
    あの動きは何なのか……?

  2. A より:

    若草プロジェクト、BOND、ぱっぷす、Colabo、の通称「WPBC」のメンバーが成立に関わった。
    ここの順番はあってるのに通称が順番違い
    WBPCな

  3. 村田碧 より:

    記事読みました。
    石井孝明さん応援しています。
    これからもこの問題の発信を続けて下さい!

  4. 通りすがり より:

    すばらしい記事です。問題を知り勉強のためにいろいろ見る中で拝見しました。これからも価値あるご執筆を。

  5. ロマロマ より:

    このままこの法案が施行されれば「これでは足らない」「困難女性はまだまだ増えている」とばかりにやがて莫大な金額に到達し利権にしがみつく魑魅魍魎は山のように膨れ上がり収拾つかなくなった日本政府は国民(純粋な日本人国民)と共に滅びるだろう。
    恐ろしさに背筋が寒くなる

  6. ヒザ上ニア より:

    暇空氏WBPC騒動からミーハーに興味を持った者です。
    成年後見人制度に不安を感じています。高齢者、精神障害者、(生活困窮者?)を対象に本人代理として資産管理、契約など本人意思を代行する制度です。医者の診断書を基に裁判所が必要を判断し任命していく制度ですが、制度に曖昧な部分が多く隙があります。他人の判断で自分の意思を無視される社会に全体主義の足音を感じてます。

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