ベトナム戦争での韓国兵の性犯罪

石井孝明
ジャーナリスト
韓国兵はベトナム戦争で何をしたか(iStock/Im Yeongsik

日韓関係に、いわゆる「従軍慰安婦問題」がくすぶる。2015年ごろに韓国は、「慰安婦=性奴隷」「強制連行された」などと事実無根の批判を政府と民間が繰り返していた。攻撃は今は一服したが、再び不快なことを仕掛けてくるかもしれない。一方で、問題解決は一筋縄ではいかないが、未来へのヒントとして各国の「戦争と性犯罪」を見直してみてはどうか。一例として、韓国軍のベトナムでの行動を、文献から抽出してみた。

夕刊フジと産経新聞ウェブに2016年7月に掲載させていただいた原稿を再編集し、掲載してみる。&ENERGYは、経済情報サイトだが、たまには変化球を。

民間人攻撃で恐れられた韓国兵

「韓国兵は恐れられていた。残忍なやり方で女性をレイプして殺す例が多かったからだ」

米ニューズウィーク誌は2000年4月12日号で、韓国軍のベトナム戦争参戦をめぐる記事を掲載し、現地の人々の恐怖と怒りをこう伝えた。韓国軍は民間人を8000人以上殺害した可能性があるという。

米ジャーナリスト、ディヴィド・W・コンデ著『朝鮮現代史』(太平出版社、1972年)には、「(1966年に)韓国軍が昼日中に結婚行列を襲い、花嫁を含め7人の女性を強姦。結婚式に呼ばれた客の宝石を残らず奪ったうえ3人の女性を川へ投げ込んだ」(要約)などと、凄惨な描写もある。

北岡正敏神奈川大名誉教授らの『韓国の大量虐殺事件を告発する』(展転社、2014年)では韓国軍による虐殺で生き残った数多くの人々が証言している。37人が虐殺されたビンディン省キンタイ村の85歳の老人、トンさんは以下のように語った。

「韓国軍は、赤子・子供・婦人・老人の住む村の中に侵入して、虐殺した。戦いもせず、家々に火をつけ、家畜を殺し、生活ができないようにした。さらに女性を暴行し、強姦し、子供・婦人を殺した。人間以下の軍隊である」。

英雄として評価されたが実態は…

ベトナム戦争で、韓国は64年から72年まで、延べ32万人の兵士を送り込み、北ベトナム政府軍、南ベトナムの共産勢力と戦った。そして、5099人が戦死した。米国が払った韓国兵の給料の一部は貧しかった国庫に入り、韓国の経済成長「漢江(ハンガン)の奇跡」のために使われた。兵士たちは英雄としてたたえられた。

しかし、ベトナムでは韓国人に対する憎しみが強い。民間人の大量虐殺を含む、韓国兵の掃討作戦の過酷さに加え、現地女性の間に生まれた「ライダイハン」と呼ばれる子どもの問題もある。

韓国政府は戦争犯罪を認めていない。前述のニューズウィーク誌で、派遣韓国軍の司令官だった蔡命新(チェ・ミョンシン)中将(退役)は「償いは必要ない」「生き残るために兵士は相手を殺した」と語った。当時の南ベトナムの共産勢力はゲリラ戦術を使い、時には民間人を装って攻撃を繰り返した。その行動は、批判されるべきだし、韓国軍兵士たちが疑心暗鬼になったことは理解できる。しかし韓国軍の反撃は過剰であり、または必要のない「殺すだけ」のものがあった。

歴史の直視は韓国でも難しい。ただし建前と違って兵士は苦しんでいる。韓国の作家、金賢娥(キムヒョナ)氏が書いた『戦争の記憶 記憶の戦争—韓国人のベトナム戦争』(三元社、2009年)では、犠牲者と加害者の双方の言葉を伝える。参戦した兵士は次のように語る。当時、韓国の派遣兵士には、ベトナムの民情やベトナム語を含めた教育はほとんど行われず、また住民保護の必要も教えられず、ただ殺すことだけを教えられたという。

「一度だけでも民間人を殺してはならない、強姦してはならないと聞いていたら、しなかった。私が戦う理由がどこにある。しかし生き残らなければならないと考えるようになると、婦女子もベトコン(注・共産兵の蔑称)に見えた」(要約)

日本を批判する前に、自省はないのか

同書で、金氏は韓国の歴史家のこんな言葉を記している。

「日本は犯罪行為を力の論理で包み込んで美化することに忙しい。罪責感と責任感は眼中にもない。日本は理解しなければならない。過去の克服は『ともに記憶すること』であって、『ひとりで埋めてしまうこと』ではないことを」。金氏は日本に強い批判を向けるが、この文章を引用した上で、「国名に韓国という単語を当てはめても同じ」とも指摘した。

ただし、いわゆる「従軍慰安婦問題」はそもそも韓国から主張される証言の大半が事実ではないと思われるので、日本人は誰も、共に記憶もできないと、私は思う。

戦争で強められた憎悪と狂気が敵の女性への暴力に向かう。どの国でも、こうした悲劇が繰り返されている。韓国も例外ではない。ベトナム戦争での異常な行為が、文献や報道の調査から見えてきた。

2001年には当時の金大中大統領がベトナムを訪問した時に、それを謝罪し、補償を約束したが、賠償はほとんど行われていない。また軍そのものによる検証も行われていない。

筆者は、戦争犯罪など過去の克服は難しく、時には「あいまい」にすることは許されるのではないかと、『東京のど真ん中の「戦争犯罪」−過去の虐殺にどう向き合うか?』という記事で、私見を述べた。

韓国人が、あいまいにしたがるのは分かる。しかし、韓国が日本を性犯罪で批判するなら、自国の歴史をまず真剣に見つめ、反省することが行われなければならないはずだ。

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