自民党議員に再エネ企業の株取引スキャンダル

石井孝明
ジャーナリスト

自民党・秋本真利衆議院議員が再エネ企業株を保有し売却

(イメージ)古典的な汚職話が再エネに絡んであったのだろうか(iStock)

2月2日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の源馬謙一郎議員が、秋本真利・自民党衆議院議員、外務政務官の秋本真利議員の地元事務所の違法建築問題と、株取引を問題にした。

違法建築問題は文春が報道している。(記事「千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い」)

私が関心を持つのは秋本議員の風力発電会社レノバ社の株式の保有についてだ。この秋本議員は、自由民主党の再エネ議連(再生可能エネルギー普及拡大議員連盟)の事務局長として、再エネ業界の優遇策を推進してきた人物だ。利益誘導と受け止められかねない行為だ。立憲民主党のYouTubeでダイジェストが見られる。4時間46分から5時間14分までだ。

「モリカケサクラ統一教会」のように、他の疑惑には、事実関係を確認しないでも喜んで飛びつくメディアが、この問題をあまり触らない。これまで再エネを賛美してきたからだろうか。秋本議員は、その再エネをめぐる政治行動を批判したアゴラ研究所の池田信夫所長に名誉毀損訴訟をしている。池田氏はそれをスラップ訴訟と批判している。議員がそうした訴訟をすることは問題であるし、もしそれが影響してメディアが動かないなら残念なことだ。(池田氏記事「秋本真利によるスラップ訴訟について」)

源馬議員の発言をそのまま紹介して、この質疑を拡散したい。金銭的に利益を得た疑惑があるので、当然秋本議員には責任がある。仮に潔白であったとしても、疑惑を持たれるような政治活動は当然するべきではない。

政治家が介入し再エネの制度を変えた

以下は風力発電会社のレノバ社の株価である。エネルギー政策に関係する事実は以下の通りである。

(表)レノバの株価(グーグルより)

▶︎これまで諸規制で行えなかった洋上風力の発電を、国が領海内で認め、その利用権をめぐる第一回の入札を2021年12月に行なった。洋上風力の実現には、自民党の再エネ議連も後押しした。

▶︎事前に、レノバ社、日本風力開発などの企業が、入札を取ると予想された。が2018年前後の200円から6000円前後に上昇したのは、この期待のためである。

▶︎ところが、入札のあった3地域全てで三菱商事が落札する結果になった。それを一因にレノバ社の株価ては2021年12月から暴落した。

▶︎経産省は入札で、応札価格の低さに高評価を与える制度を作った。再エネには補助金が出るため、国民負担を抑えるためだ。事前に制度は公開していたが、三菱商事は海外製品などを調達し、安い価格を提示した。

▶︎ところが入札での敗北に再エネ業界が反発。専門家と自称する再エネ業界関係者も制度がおかしいと騒いだ。自民党再エネ議連も同調し、経産省への業界陳情の仲介、質問、自らの意見表明を繰り返した。秋本議員は異議申し立ての中心人物だった。

▶︎第2回入札では、制度は公示された後で、突如入札ルールが見直された。「安さ」だけでなく、これまでの実績や納期も配慮される新制度が行われることが決まった。レノバ社の22年中期からの株価上昇はこれが影響している。業界関係者は「レノバ方式」というほど、新興企業に有利な仕組みになった。レノバの株価は再上昇した。

秋本議員はレノバ社の株を持って制度づくりと政治活動をした

そして源馬議員の秋本議員への質問の概要と、秋本議員の返事は以下の通りである。

▼源馬:秋本議員は第4次安倍政権(2017年11月から2018年10月まで)で国交省政務官だった。秋本議員は国会で「安倍首相に洋上風力の制度を作るために、国交省に政務官として行かせてもらった」と発言した。さらに上記入札で三菱商事が入札を落札した後で、経産省に制度の見直しをしつこく求めた。それは国会の質問でも確認できる。

▼源馬:政治資金報告書・資産補充等報告書では、秋本議員は、2017年にレノバ株を400株取得し、2018年に2200株買い増したようだ。これを売って利益を出したのではないかのではないか。株の売買の時期と利益を教えよ。

▼秋本:株取得はした。国土交通政務官在任中の売買はしていない。政務官退任後に売却した。個別の株取引、利益が出たかについては答弁をさし控える。(売買数量、現在保有しているかどうかの回答はせず。)

▼源馬:秋本議員は、第二ラウンドの入札から評価の方法を変えるように、経産省に圧力をかけた。国会でも「価格だけでは決めてはいけない。運転開始の速さが問題だ」「新興企業が多数入れるような仕組みを作れと言っている」と述べた。レノバだけではなく、再エネ企業から政治献金をこの3年で2500万円受けている。

▼秋本:制度改正は経産省の所管で、私は一議員であるから職務権限はない。レノバ関係者から献金を受けてはいない。他の献金は適法に処理している。

源馬議員は「2500万円の献金を再エネ業界から受け、レノバの株を持った秋本議員が、それらの企業のために頑張った利益誘導と言える」と総括した。私も、それに同意する。秋本議員は、1000円以下の安値で買った後でレノバ株を持ち続け、売却で利益を出した可能性がある。その株価上昇要因である洋上風力発電の制度設計に関わっていた。

自民党の再エネ推進は利権がらみか

私は、この入札制度の突如の変更を当時からおかしいと思っていた。エネルギーインフラは大規模に作った方が、規模の経済性で供給価格が当然下がる。再エネ賦課金の膨張が問題になる中で、価格の安さが入札の中心にするという経産省の当初の考えのどこがいけないのか。それを秋本議員らは歪めてしまった。しかもそれに金銭問題が絡んだとした疑惑が事実としたら許されないだろう。

これは秋本議員の個人的な疑惑にはとどまらない。自民党再エネ議連、同党全体の問題になる。また秋本議員は、河野太郎大臣との親しさを常に強調していた。河野氏と、再エネ議連会長の柴山昌彦議員には、秋本議員と自らの行動に説明責任があるだろう。

国際政治学者の三浦瑠麗氏が政府の成長戦略会議で2021年に太陽光発電の拡大を主張した。ところが、彼女の夫は、東京地検特捜部に再エネ詐欺の疑いで現在捜査をを続けている。それが報じられると、彼女には大変な批判が集まった。彼女も活動を休止している。なぜ同じような当然の批判が秋本議員に向けられないのか不思議だ。

再エネ絡みの「うさんくさい人たち」はその存在が迷惑だ

(写真)秋本真利議員(衆議院より)

電力料金が上昇しているが、その一因は再エネ賦課金だ。1世帯あたり、月2000円近く、電力料金の1割以上になっている。この制度の見直しに自民党が動かない理由に「利権」があるとしたら、国民感情的にも、倫理的にも許されない。私は自民党は特に支持しないものの、立憲民主党の大半の政策や行動には批判的だ。しかし、この問題は立憲民主党は「徹底的に」追求してほしい。

私は再エネの応援団である。再エネには二酸化炭素を出さない、国産エネルギーであるなど、多くのメリットがある。それを適切な形で増やすべきであるが、大量に無計画に導入してしまったため、エネルギーシステムが混乱している。

この秋本議員をはじめ、再エネを騒ぐ人たちは、なぜか「うさんくさい」。菅直人、小泉進次郎、河野太郎、小池百合子各氏の政治家の顔や、10年前、再エネと大騒ぎして、今は忘れたのかほとんど騒がなくなった文化人たちの顔を思い浮かべてほしい。主張がエキセントリックで、事実に反し、「金の匂いのする人」もいる。

こうした人たちが、再エネを汚し、日本のエネルギーシステムをおかしくしている。自制と自省をしろと言っても聞かないだろうが、こうしたおかしな人たちの再エネ賛美を黙殺し、健全な再エネ発展のための議論を始めたい。

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