東京が金融センターとして復活?ー「嫉妬」の国では無理

石井孝明
ジャーナリスト

(このたび、外国人問題、経済安全保障問題のサイト「Journal of Protect Japan」を立ち上げた。エネルギー、環境政策の解説を行う「with ENERGY」と共に、利用いただきたい。双方向のやり取りを期待する。意見、感想をぜひ寄せていただきたい。)

(写真1)「KABUTO ONE」(東京・兜町)で東京証券取引所を創設し、今年7月から一万円札の肖像になる渋沢栄一の像があった。日本の衰退を見たら、彼はどのように考えるだろうか

兜町の街角で「日本の衰退」を感じる

昔話をすると、自分が「おじさん」になったと悲しくなるが、少しお付き合いいただきたい。

私は、通信社の記者としてジャーナリストの経歴を1994年に始めた。当時の東京は、世界の金融、経済の中心だった。バブルが崩壊したとはいえ、1997年に深刻になった金融危機は顕在化していなかった。東京証券取引所のある東京兜町は日中は証券マン、企業人でごった返していた。

1989年にバブル期の最高値をつけた日本の株価は、その時、ニューヨーク株式市場の時価総額の7割まで迫っていた。

2024年6月に、兜町で仕事をする機会があった。昼間は人通りがあるものの、30年前と比べて人の数は減っていた。そして喫茶店だらけになり、立ち並んだ証券会社の数も減っている。街が静かになっていた。

日本株の外国人投資家比率はバブル期の2割前後から、現在は5-6割になった。個人株売買が減って、証券会社も活気も兜町から減った。1990年代初頭は場立ち(ばたち)による市場内での手振り取引がまだ半分を占めていた。それは今消え全ては電子取引と決済だ。証券会社の人が減ってしまった。しかしそれだけではないだろう。

一人当たりGDPは1990年の世界2位から現在は30位前後まで凋落。シンガポール、香港にアジアの金融の中心は移った。東証の時価総額も、シンガポールの7割ぐらいになり香港に抜かれた。日本経済そのものが凋落した。

香港凋落、東京復活のチャンスか?

この経済・情報の中心地として、東京の復権のチャンスが起きている。中共政権が香港を締め付けているためだ。シンガポールには追いつけそうにないが、アジアで二番目の香港は越せるだろうとの考えだ。

文化的面白さ、生活環境の良さでは、日本は世界有数の魅力がある。海外を旅行すればわかるが、食事の美味しさと多様性は、日本は世界に隔絶している。実際に強権政治の続く中国から日本に、富裕層を中心に逃げ出す動きもある。

東京の復活は、繰り返し日本の金融当局、経済に関心を持つ政治家が叫んでいる。しかし、なかなか進まない。英語による行政対応や生活環境の不十分さ、専門人材の層の薄さなどの弱み、まだ他国に比べて高い法人税は、なかなか改善しない。

変えられない個人税制

そして、私は個人税制の問題が、日本の金融面での復活に一番問題になると思う。

香港の最高税率は17%、シンガポールは24%だ。ところが日本は55%もある。(注1)

実はこれはバブルの時から問題になっている。そして30年変わらなかった。金融庁(以前は大蔵省)、そして政治家たちも、税金の引き下げは口にしない。こうした金融人材は、東京には居住しないだろう。

1990年代から、世界の給料の姿は米国を中心に変わった。金融関係者、企業経営層は、大して立派なことをしていないことも多いのに、一般人と比べて莫大な報酬を得るようになった。

多く見積もって数万人の高額所得者を誘致するために、1億2000万人の国民と別の特例税制を適用できるのか。もしくは税制を変更して異様な累進性の改善をできるのか。答えはもちろん「否」だろう。

私は世界のルールがそうなってしまった以上、ある程度、それに合わせる必要があると思う。しかし、そんなことは日本では認められなさそうだ。

「福島みずほさんが支持を受ける国」の末路

10年前、この問題をある金融問題に詳しい政治家と議論をしたことがある。この人は落選し、別の道を歩んでしまった。日本では経済政策通は、選挙で勝てないようだ。名前は出さないでおこう。

「金持ち向けに税制変えられますか。日本と東京の金融・経済復活のために」と言うと、その人は笑って答えた。「無理ですよ。福島みずほさんが20万票を取る国では」。

ご存知の通り、福島みずほさんは弱小政党社会民主党の党首だ。自分は資産公開では数億円単位の金を持つ富豪だが、弱者保護の政治主張を繰り返している。そして金持ちを攻撃する。嫉妬心にかられるのか、彼女によく似た主張をする人が日本に少数ながらも一定数いる。福島さんは当選し続ける。メディアは自称「弱者の味方」だ。誰かを優遇したら、大騒ぎをするだろう。

平等至上の国になった日本で、金持ち、つまり資本主義社会での勝者を讃えることはないだろう。その結果、税制も大変革が起こりそうにない。

日本は変わりそうにない

ちなみに日本の異様な累進課税と相続税など、平等を志向する税制は、米国の占領期に導入された。(シャウプ勧告、1948年)渋沢栄一の活躍した戦前には、資本の蓄積を促すために、富裕層の相続税、累進性はかなり低かったという。最高で3割程度だったと記憶している。米国の作った制度が、1940年代から、そして2024年の日本を左右している。

確かに、グローバルスタンダードと称する海外で作られたルールが押し付けられるのも、高額報酬を許容されて私たち一般庶民と格差が生まれるのも不愉快だ。しかし、日本は自ら世界のルールを作れない。新しいルールにも対応できない。そして、したたかに世界ルールを活用して日本を豊かにする人材もなかなか出なさそうだ。

私は一介の経済記者に過ぎない。変わらない日本で、経済の衰退を悲しみながら伝え続けることしかできないかもしれない。

(注1)Fobes Japan Web「東京はアジアの「シン・金融センター」になれるか? 訪れた好機と克服すべき課題

石井孝明
経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

1 件のコメント

  1. 米島弁 より:

    社会保障を度外視して考えるなら、嫉妬の前にチャレンジ精神を育み、実践する精神的土壌が不毛なんだと思いますよ。証券市場に対する一般人の投資行動だけでなく、ビジネスでもそれ以外でも、誰かが何かにチャレンジして、失敗するとそれ見たことかと蔑み、成功すると妬んで揚げ足取りが始まるのは、得てして地域社会。その地域社会ごとに名士や各種団体が候補者を作り、その中から国会議員が選ばれる。安定性は高そうですけどね。

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