地震に役立つ情報、原子力、復旧、太陽光ー原発重大事故は1億年に1回の確率

石井孝明
ジャーナリスト
(写真1)北陸電力志賀原発。2015年、筆者撮影。アイボリーホワイトと薄い群青色の外装だった。群青色は旧加賀藩で賓客用の施設に使われ、「もてなしの色」とされている。周辺環境に配慮したデザインで、同じく青と白を使うイスラム教のモスクのようだ。発電所では珍しく1995年の「グッドデザイン賞」を受賞している。かつては森に覆われていたが、震災後は事故対策で、切ってしまった。仕方がないにしても、もったいなさを感じてしまう。

地震関係で知られない情報3題

2024年を迎えた。今年は昨年は不法行為をする外国人の報道と対応に追われたが、今年はその活動の継続、さらにエネルギー、経済安全保障について考えていきたい。よろしくお願いします。

1月1日に、能登半島沖を震源とするする元旦に「令和6年能登半島地震」が発生してしまった。北陸、特に石川県の皆様の生活の平穏の回復と、1日も早い地域復旧を祈りたい。

私の関係するエネルギー問題で、私が知り、あまり知られず、役立つ情報を3つ述べてみたい。被災者の方、そして他地域の方にも、いつの日か直面する災害で役立つことを祈っている。

1・北陸には原子力施設が集中しているが、これが大事故に発展する可能性はほぼない。この状況で原子力発電所の危険を強調する人は、リスクの認識能力がおかしく、常識がない人なので、近づかない方が良い。

2・自然災害ではインフラの中で電気は早期に復旧する。家で停電した場合に、設備が破損していなければ、通電を待つのが合理的だ。慌てて新しい器具などを買う必要は少ないだろう。

3・太陽光パネルは、災害時、漏電や落下で危険なので近づかないでほしい。

以上の3点だ。

原子力発電所で地震対策は徹底

まず原子力発電所の安全性についてだ。北陸には北陸電力志賀原子力発電所(しか)(石川県志賀町)、新潟県西部に東京電力柏崎刈羽原子力発電所、福井県には関西電力の美浜、大飯、日本原電の敦賀原子力発電所がある。

今回の地震では、志賀原発で変圧器の破損と、2つある外部からの電力線が破損した。それ以外は、事故は発生していない。原子力規制委員会も、原子力災害と認定される緊急情報をこの地震で発信していない。事故は深刻なものではないと判断しているのだろう。(ホームページ)つまり騒ぐ必要はない。

志賀の原子炉2基、柏崎刈羽の5基は、東日本大震災直後から運転停止中だ。燃料も装填されていない。ただ使用済み核燃料の保管を原発構内の保管プールで行っている。その冷却は必要だ。その燃料の熱も時間の経過で低下しており、それが破損して事故となる可能性もほとんどないだろう。

原子力の重大事故の確率は「1億年に1回」

日本の原子力発電所は地震を想定して建てられている。活断層から離れ、10万年以上動かない岩盤までの上に建てられる。原子炉は地震で緊急停止する仕組みが作られている。

東京電力福島事故も、その実態を知らない人が多い。この事故は、地震で原子炉は破損していない。運転中の3つの原子炉は東日本大震災の際の地震では緊急停止した。しかしその後の津波によって冷却設備が破損し、炉の冷却ができなくなり、炉心が損傷した。また周辺地域で人体に影響があるとされる程度の放射能漏れは発生していない。(資源エネルギー庁ホームページ「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」)

日本の原発は、東日本大震災の後で、2012年に新規制基準に基づいて運営されている。これは事故の反省に基づくものだ。私は過剰な設備が作られている面があると思うが、安全性は大きく高まっている。

原子力事故には、事故確率という考えがあるという。事故のリスクを確率で算出するというものだ。ただし、これには仮定を多く置かねばならず、福島前の規制では参考値として取り入れられていたが現在は採用されていない。

ある電力会社(積極的に広報していないので名前は伏せる)が周辺地域に人体に影響がある重大事故、つまり1ミリシーベルト以上の被曝がある事故が起きる可能性を試算した。福島事故前は「100万炉年に1回」(炉年:原子炉の稼働時間)だったが、新規制基準への対応によって「1億炉年に1回」に低下した。ちなみに福島事故は、「重大事故」になっていない。人体に影響があるまでの量の放射性物質が拡散しなかったためだ。

以上の情報を考えると、この能登半島地震で「原発が危険だ」と絶叫している人はおかしな人たちだ。目の前で地震災害が起きているのに、存在しない原子炉事故に怯え、「1億年に1回」のリスクを注目する変な認識能力の人だ。そして騒ぐことは被災者にも失礼だ。こんな人たちと付き合うのは時間の無駄で、全国民でこれらの人たちを無視すべきだろう。

一例を示してみよう。元経産官僚の古賀茂明氏は、政府と原子力発電に憎しみを持ち、奇妙な行動を続けている。1月1日に、わざわざ志賀原発に電話をかけて、それをSNSのX上に公開した。当然「炎上」し、コミュニティノートで「不要普及の連絡は差し控えるべき」と、指摘されてしまった。同じような恥ずかしいことを、私たちはするべきではない。

(写真2)古賀氏のXでのポスト

日本のインフラ復旧は早い、電力は特に早い

能登半島地震では、1月3日早朝の時点で、災害から36時間(1日)が経過し、電力と水道はほぼ復旧した模様だ。日本のインフラの復旧力は世界の中で、異様に高く、回復が早い。素晴らしいことだ。

「必ず助けが来る」。今の日本では、大規模災害で、こう言って励ましても、決して嘘にはならない。これはインフラ企業、物流・運送企業、また道路を保守する公的機関の能力の高さを示すものだろう。

エネルギー・インフラの災害からの復旧で、電力中央研究所が2012年に「東日本大震災・被災地におけるエネルギー利用 実態調査」というリポートを発表している。

電気、水道、灯油、ガソリン、都市ガス、LPガスのライフラインを調べると、復旧が早かったのは電気で1週間後までに95%以上が復旧している。(図1)他のインフラよりも復旧は早い。

(図1)電中研リポートより

電力の復旧の早さは電力会社、この場合は東北、東京の両電力の運営能力の高さに加え、電線が地上に露出しているために他のインフラより整備がしやすいという点もあるのだろう。

もちろんこれは地域の停電からの復旧で、家の設備が破損していた場合には電気は使えない。しかし無闇にエネルギーを求めて動くよりも、家で電気の復旧を待つのが合理的行動だろう。どの地域でもそうだ。ただし通電した場合に、家の方で機器が壊れ漏電やそれによる加熱、火災が起こる例もある。気をつけてほしい。

今回の地震でも、送電網維持の面で北陸電力、東北電力(新潟県)に期待しても大丈夫そうだ。頑張れ北陸電力、東北電力。

私が懸念しているのは電力自由化の影響だ。経産省が、こうした災害対策の責任を曖昧にしたまま、自由化を進めている。自由化による新規参入者はそれほど負担をしないのに、既存電力会社のみに過剰な責任を負わせている。こうした政策をやめて、災害時の適切なルールづくりをするべきだろう。

太陽光での事故の懸念

最近の論点として、太陽光発電の災害での危険性の問題がある。太陽光発電パネルは光にあたれば発電を続けてしまう。災害時には漏電による関電の可能性がある。パネル5枚ほどの太陽光発電1セットでは300ボルトの電流を発生させる場合がある。これは感電で心筋梗塞などの健康被害を起こしてしまう。

また太陽光パネルは、強化ガラスと特殊合金できており、1枚5キロ程度の重量がある。落下、破損で怪我をする可能性がある。

北陸地域は年間を通じて日本の中で曇りが多く、太平洋岸ほどパネルは増えていないようだが、それでも各所で散見される。余震も続いているので、北陸在住の方は、近づかないようにしていただきたい。

これも政策のミスだが、太陽光は独立した送配電網を作れば、災害の時に自律的な地域の電力供給をする形にできた。しかし数を増やすために、既存の送配電網に繋げる形にした。そのために、災害の時には逆に脆弱になっている。電力網が災害で破損した場合に、その発電が役立たないのだ。私は再エネ、太陽光の普及を応援しているが、各電源の長所、短所を見極めて取り入れるべきと思う。今の太陽光パネルは、状況によっては危険な存在になる。

以下の記事で、災害と太陽光の関係を解説しているので参照いただきたい。「災害での感電、ガラス片…、太陽光パネル義務化で東京は危険な街になる

以上の3点は、なかなかメディアが伝えない情報なので、指摘した。正確な情報を参考に、能登半島地震から地域が復興することを、皆さんと共に私は支援したい。

石井孝明
経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

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