小池都知事、ウイグル人の悲鳴が聞こえますか?−太陽光パネル義務化問題
東京都は、新築住宅への太陽光発電設備の設置義務化を検討中だ。小池百合子都知事の主導だ。私は再生可能エネルギーの普及を応援するが、この政策は問題点が多く反対している。この文章では中国のウイグル族への人権侵害問題と、この政策の関係に絞って、考察を述べたい。
中国のウイグル族への人権侵害は、私はそこまで確認できないので使わないが「ジェノサイド」(民族や特定の社会を滅ぼす大量虐殺)という犯罪行為と表現する人もいる。
目次
東京都は人権問題に曖昧な答え
12月6日に、エネルギー政策の研究者などが出席し、東京都庁で「太陽光パネル義務化反対請願」の記者会見を行った。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏は「人権、経済性、防災の3点で特に問題がある」と指摘した。太陽光パネル生産と人権問題では、杉山氏が海外情報を収集・分析し、日本に積極的に紹介している。
東京都は、新築住宅への太陽光パネル義務化の条例を22年12月時点で開会中の都議会で審議する予定だ。そのP Rのために『太陽光発電 解体新書』というQ&A集を出した。その19番で以下の質問と回答がある。
「Q・太陽光パネルの生産は中国に集中しており、新彊ウイグル自治区における人権問題が懸念されていますが、社会的な問題はないのでしょうか?」
「A・住宅用の太陽光パネルのシェアが多い国内メーカーのヒアリングによれば、 当該地区の製品を取り扱っている事実はないとの回答を得ています。引き続き、国や業界団体等と連携しながら、SDGsを尊重した事業活動を推進していきます。」
あまりにもばかばかしい答えだ。業者によるこの程度のヒアリングで、問題ないとするのだろうか。この説明で納得できる人がいるのだろうか。
ウイグル人から出た政策への懸念
IEA(国際エネルギー機関)が22年夏に発表したリポートによれば、現在の新疆ウイグル自治区の太陽光発電の原材料のシェアは中国製の40%であるが、世界的な材料不足の中で近日中に95%まで増える可能性があるという。
そして新疆ウイグル自治区で、原材料のシリコンの採掘と、パネル製造をしているのは、中国軍の関係企業だ。囚人労働などで採掘と生産をしているという疑惑が出ている。中国政府は現地の査察を認めていないが、衛星写真などで証拠が出ており、その強制労働の疑惑を欧米メディアは頻繁に報道している。(一例として、BBCの報道「China uses Uyghur forced labor to make solar panels, says report」) そして日本の太陽光パネルの8割前後が中国製であり、その大半はいずれウイグル地区産の原料を使うことになる。東京都は日本で流通する太陽光パネルの7割が日本メーカー製としているが、その大半はすでに中国で作られたものだ。
日本より欧米諸国で、この太陽光パネルと強制労働の問題への関心が高い。米国では昨年、中国が強制労働で作った製品の輸入禁止法案を作り、22年6月から施行されて、太陽光パネルの輸入が止まった。E Uも同様の統一規制を、今年夏から審議中だ。そんな中で、東京都は太陽光義務化に突き進む。
ウイグル人たちも東京都の動きに批判を始めた。「中国国外に逃れた亡命ウイグル人でつくる民族団体「世界ウイグル会議」(本部・ドイツ)のドルクン・エイサ総裁は5日、東京都内で記者会見し、新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置義務化を目指す小池百合子都知事に対し、慎重な対応を求めた。新疆ウイグル自治区の強制労働による製造が疑われる中国製のパネルが使用されれば、「ジェノサイドに加担することになる」と訴えた」。産経新聞が12月5日付で伝えた。
このまま東京都が新築住宅の太陽光発電設備の設置義務という政策を行えば、中国の利益を増やし、人権侵害問題に加担してしまう可能性がある。
ただのパフォーマンス? 小池都知事の主導政策の理由
この太陽光パネル義務化という政策は、太陽光発電や再エネの普及の問題を複雑にしてしまう。今は保守派、右寄りの人だけではなく、多くの政治的立場の人が中国問題に敏感に反応する。日本は中国の軍事的脅威に直面しているためだ。さらに日本は各地で太陽光発電の乱開発で国土が破壊され、森林が切り開かれパネルが敷き詰められる光景が出現している。私がこれまで述べたような実態を知れば、「中国」「人権」「太陽光発電」に絡んで多くの人が批判の声を上げるはずだ。
エネルギー政策は、経済、環境、安全保障、安全の論点を配慮し、合理的に考えるべきだ。残念ながら、2011年の東電の福島第一原発事故の後で、原発をめぐる感情的な反発と政治利用によって、エネルギーは政争の道具になり、非合理なことが横行した。小池氏は太陽光発電を、そうした政争の渦に放り込もうとしている。これは太陽光発電や再エネの健全な発展の邪魔になる。
この太陽光パネルの義務化政策は、突如21年の秋に出てきた。審議会などで特に議論もされていない。21年3月に当時の小泉進次郎環境大臣が、いきなり会見で打ち上げたが、批判が多く、立ち消えになった。それなのに、なぜか小池都知事は飛びついた。国がやらない政策をやって目立とうとしたかのようだ。
前述の会見で、私は「なぜ、小池都知事が急にこれを政策化したのか」と聞いた。会見に出た上田令子都議会議員は、「私もはっきりとはわからない。小池さんは、記者会見の目玉テーマをいつも探している。深く考えないパフォーマンスかもしれない」と推測していた。小池都知事のこれまでの政治家としての軽薄な言行を見ると、どうもそれが本当に思えてしまう。
日本人全体の問題、政策を止める微かな希望
ただし微かな希望もある。この拙速な政策化に、世論の批判が強まっている。この問題について、都議会の各会派は、最初無関心だったが、「慎重な審議を求める」に変わってきたという。さらに進めて、この政策を止めたい。
これは都民以外のすべての日本に住む人にも、関係する問題だ。再エネ補助金は日本での電力使用者すべてから徴収されて、国から出る形の補助金だ。東京都の持ち家を持つ人、それはおそらく日本の平均より裕福な人だ。そうした人は家の購入で、無理についてくる太陽光パネルによって、ウイグル人への人権侵害に巻き込まれてしまう。その人たちがパネルで利益を得たとしよう。それは全国民が負担する再エネ補助金によるものだ。これは豊かな人に普通の人が利益を与える格差拡大政策と言える。その結果、日本人全体もウイグル人への人権侵害に加担してしまう。
そんなエネルギー政策をいったい誰が望むのか。小池都知事に条例を取り下げさせたい。もし成立したとしてもウイグル以外の場所からの購入を義務付ける形にしたい。反対の声を広げたい。
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