再エネで地検特捜部が大物政治家を狙う?

石井孝明
ジャーナリスト

三浦瑠麗さんの夫の会社が強制捜査

再エネをめぐる怪しい話、事件化の噂が飛び交う(iStock)

再エネをめぐる怪しげな話が続けて起きている。東京地検特捜部が捜査に動いており、エネルギー業界や政界関係者の間では、近く政治家の摘発があるのではないかとの変な噂が飛び交っている。

タレントの三浦瑠麗氏の夫が経営する投資会社Tが1月に東京地検特捜部の捜査を受けた。太陽光発電をめぐる約10億円の詐欺容疑という。この案件は相手方と民事で係争中のようで、刑事での強制捜査の並行はかなり異例だ。そしてこの事件はもっと大きな事件のための情報収集という観測が出ている。

小泉純一郎元首相、小泉進次郎衆議院議員と近かった、太陽光発電会社T(横浜市)の経営陣が21年に特捜部により詐欺容疑で逮捕、昨年有罪となった。また再エネ企業が集まり政界に繋げていたあるフィクサーの会社A、また投資会社Bの関係者を、特捜部は呼んで話を聞いているという。

噂だが、特捜部はある大物政治家が関係した再エネ開発の疑惑の事件化を考えていたようだ。しかし、それがうまくいかずに周辺に捜査を広げ、当初の狙いとは別の政治家の事件の立件を考えているという。

特捜部の捜査と関係しているかは不明だが、自民党の秋本真利衆議院議員、外務政務官の再エネをめぐる株取引の疑惑はすでに紹介した。(with ENERGY記事「自民党議員に再エネ企業の株取引スキャンダル」)

新興業界のオジサン経営者は政治が好き

このように再エネにはスキャンダルめいた話が増えている。再エネでは、補助金を使ってそれを増やす政策が行われてきた。企業努力やイノベーションではなく、制度をいじって利益を増やそうという動機が、事業者に起こってしまう。2022年のFITで流れる補助金は3兆6000億円の巨額だ。悪い人間が集まるのも当然といえよう。

日本の中小企業のオジサン経営者は、政治の好きな人がなぜか多い。イメージで言うと、森友事件の籠池夫妻のような、品が悪く、すぐ人脈を見せびらかし、大物ぶる人たちだ。政治取材をすると、そういう自称大物が国会周りをウロウロしている。そんな変な人たちがタニマチになって、変なお金がいつも流れている。

本当に政治を動かしているのかは怪しい。行政の動きを見ている私にとって費用対効果は疑問だ。真面目にルールの中でビジネスをした方がいい。それなのに政治家は影響力があるように一般人に錯覚させ、中小企業のオジサンたちは自分が凄い人間であるかのように思い込んでいるためか、そうした構図が必ず現れてしまう。そして新しく補助金でできた再エネ業界でも、政治ごっこに熱心な事業者がかなりいる。

「国策捜査」の狙いは再エネか?

こうした噂レベルの話を紹介して、違和感を持つ方がいたら、お許しいただきたい。ただ私はメディア・記者は社会の変化を早めに伝え、多くの人に警鐘を鳴らす「炭鉱のカナリヤ」の役割があると思うので、この文章を書いている。エネルギー、再エネをめぐる社会の変化の動きの前触れという意味が、一連の動きにあると思う。

元外交官でベストセラー作家になった佐藤優氏に『国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)という著書がある。佐藤さんは大物政治家鈴木宗男氏(現衆議院議員)の疑惑に関係して捕まる。逮捕当時の2002年、鈴木さんは悪の政治家の代表格のように扱われ、佐藤さんもそれに関与する危ない役人というイメージを作られていた。

この中で、佐藤氏を取り調べた検事が、検察は時代の転換を促す「国策捜査」を行うと話す。ただし、ターゲットは検察官ではなく世論が決めるという。印象的な言葉だ。役人が威張る不気味さ危険さと傲慢さを感じる。この言葉通り、検察が変に張り切り時として暴走することはあり得るだろう。

そして検察が時代を変えてしまうことが確かにある。2007年にライブドア社長だったホリエモンこと堀江貴文さんを東京地検特捜部が逮捕した。その後に、起業意欲が急速に萎んだ印象が経済記者としての私にある。堀江さんは当時、派手な言動で注目を集め、反感と称賛を共に浴びていた。その中で「ホリエモンでもできるなら私も起業する」という感じで、独立を目指した人はたくさんいた。ところが、堀江さんが「逮捕」という形の結末になったことで、動きが止まってしまった。

再エネをめぐる深刻な一般国民の怒り

福島原発事故の後で、再エネが優遇された。再エネが原発の代わりとなり、エネルギーをめぐる諸問題を一気に解決するかのような幻想が流れ、それを意図的に流す人、勉強もせずに踊る人がいた。その考えも、行動も間違いだった。再エネは、こうした政治をめぐる怪しげな疑惑を含め、多くの問題を日本に引き起こしている。

全国再エネ問題協議会という団体がある。今再エネ、主に太陽光の乱開発が問題になっている。同団体が日本で相談を受けた工事は1万3000カ所にもなるそうだ。メディアは伝えず、政治家や行政の動きは遅い。再エネによる乱開発に、それほど多数の国民が苦しんでいる。都市住民は知らない。それを認識した方がいい。そして、この動きを止めることを、世論が求めつつある。再エネをめぐり一般国民の大半は怒っているのだ。

再エネ事業者の大半は真面目に法律に基づいて事業を行っている。ところが行き過ぎた一部の人の行動が各所で目立ち、社会問題を起こしている。反社会勢力も入っている。さらに外国企業の動きもある。それを批判する声が社会に広がり、それを背景に再エネをめぐって事件を摘発しようと、検察が張り切り、時代を変えようとしているのかもしれない。

多くの事業者には迷惑な話だ。また検察の暴走があったら批判されるべきだ。しかし、再エネを健全に発展させようとする努力を無駄にする悪質な動きも、残念ながら再エネ業界では一部にあり、そうした勢力を業界は駆逐できなかった。一罰百戒で、再エネ業界と政界の覚醒を促すために、大きな事件が摘発されることを期待してしまう。

お上の摘発ではなく、業界自らの変化を

いやいや、こうした期待は検察の暴走を促してしまう。危ない考えだ。できれば再エネ事業者自らが、正しいビジネスをしてほしい。

また岸田政権は、経済政策の柱に「GX」(グリーントランスフォーメーション)を掲げている。(経産省サイト)実は政策をよく読むと、原子力を含めて、脱炭素のあらゆる技術に投資を目指し再エネだけではない。しかし多くの人は、太陽光や風力「だけ」を「さらに」作るのかと勘違いしている。私も資料を読み直し、政官取材をする数日前まで勘違いしていた。そのためか、この政策の評判はあまり良くない。この看板政策も、もし検察の国策捜査の行末を政権がコントロールできずに、再エネ叩きが強まったら、一緒に批判を集めておかしくなってしまう可能性もある。

再エネをめぐり違法な行為をした事業者は自らへの処罰の覚悟を、そして社会問題化しかねない「グレー」(灰色)の行動をしてきた人は自粛と是正を、とばっちりを受ける真面目な事業者は警戒をすべきだろう。時代の転換がやってきているのかもしれない。

ただし理想を言えば、再エネ業界の転換は、お上の処罰ではなく、再エネ業界自らの行動によってもたらされてほしい。

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