日本メディアだけ注目、気候変動「化石賞」騒ぎーあなたたちが化石では?
2024年は、能登半島地震や羽田空港での航空機事故などで波乱の幕開けとなった。気候変動・エネルギー問題もいろいろ荒れそうだ。原子力の復権と行き過ぎた再エネとEVの評価が一服すると思う。今回は、気候変動と報道を考える。
目次
「化石賞」を日本が連続受賞
もう古い話かもしれないが毎年12月に行われる、国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP)での化石賞騒ぎを取り上げたい。
「この先も何連覇やら化石賞」。これは朝日新聞の川柳コーナー(2023年12月5日)に掲載された一句だ。
アラブ首長国連邦のドバイで昨年12月に国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が開催された。化石賞とは、毎年のCOPで、気候変動問題を扱うNGO(非政府組織)の連合体が、交渉に後ろ向きの国を発表するものだ。
この川柳は、日本がまた受賞したことを皮肉っている。原子力発電が止まり、化石燃料を使わざるを得ない日本は、毎回のCOPで受賞する常連で、今回も13日間の交渉期間中に2回受賞した。
しかし、これは国連の正式な賞ではなく、民間団体が毎日、勝手に発表するものだ。今回は気候変動問題で目立つ存在ではないイスラエルが、パレスチナを攻撃したとの理由で1回受賞した。恣意的に選ばれている。
欧米メディアは取り上げず、中国は批判されない
欧米メディアは化石賞をほとんど取り上げない。意味がないと見ているのだろう。そして化石賞を中国はほとんど受賞しない。時事通信が「「化石賞」なぜ日本ばかり? 中国、際立つ少なさ」(同月9日)との記事を配信していた。
COPを知る人は、この賞のおかしさを誰もが感じている。世界最大の二酸化炭素、温室効果ガス排出国の中国が受賞しない。化石賞を騒ぐ怪しいNPOを、中国はおそらく支援しているのだろう。地球環境少女グレタさんも、中国を批判しない。
最近の中国は、気候変動で外交的得点を得ようと、いろいろ工作をしている。私は以下の記事を書いた。
「化石賞? 気候変動で中国でなく自国を批判する奇妙な日本メディア」
「どの国でも同じ? 正義の民間団体に怪しい資金」
原子力復活など新たな動きが気候変動で始まる
ところが日本のメディアは注目する。「日本の化石賞に「コメントせず」 官房長官、気候変動対策巡り」(共同、同月4日)「「日本の技術理解されていない」、化石賞、経産相反論」(朝日、同月7日)と、わざわざ会見で大臣に聞き、政府批判をした。
今回のCOPでは化石燃料からの脱却の合意、有志諸国による原子力活用宣言、公文書の原子力言及が増えるなど、新しい動きがあった。気候変動で、二酸化炭素を出さない原子力発電への再評価が強まっているのかもしれない。また懸案になっている、途上国への先進国の資金援助問題の合意はまとまらなかった。この「決まらない」ことも大きなニュースだ。
こうした本筋の動きではなく、化石賞という外れた動きに注目する日本のメディアのニュース感覚はおかしい。
化石になっているのは日本のメディア−自虐が社会に悪影響
若者と気候変動問題を話すと「日本は環境後進国」と述べる人がいる。日本経済は衰えつつあるが、環境技術では世界トップクラスの力を持つ企業もまだ多い。自虐的な意見の理由を問うと「COPで化石賞を取るから」と答える若者と何度も出会った。日本のメディアの記者たちは軽い気持ちで化石賞を政府批判の材料に使うのかもしれないが、ゆがんだ報道は社会に悪影響を与えている。
気候変動問題で、型にはまった古い報道を続けて「化石」になっているのは日本のメディアのようだ。気候変動問題をめぐる国際間の複雑な駆け引きを伝え、国益を考える。「化石賞」ではなく、そうした視点が気候変動問題の報道で必要であるはずだ。
残念ながら、この問題を20年ほど見続けてきた私を感心でうならせる、そして日本のビジネスパーソンに参考になる、日本のメディアの気候変動をめぐる記事は少ない。
石井孝明
経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
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