笑い話「温暖化で滅亡と騒いだら年1兆ドルの請求書がきた」

石井孝明
ジャーナリスト

恐ろしかったCOP27の結果

二酸化炭素の削減策はいろいろあるが、どれもコストがかかる(iStock/KTStock

エジプトで開催されていたCOP27(気候変動枠組条約第27回締約国会議)が11月20終了した。日本の表面的な報道ではなく、事務局の公表文を読むと、とんでもないことが書いてあった。なぜか、日本のメディアはそのことを強調して書いていない。

国連・気候変動事務局プレスリリース「COP27 Reaches Breakthrough Agreement on New “Loss and Damage” Fund for Vulnerable Countries」(COP27は気候変動脆弱国のための新たな「損失と被害」基金についての画期的な合意に達した)

このCOPで決まったことは、地球温暖化の対策基金を作ると言うものだ。そして「シャルム・エル・シェイク実施計画」に、参加国は合意した。金額と方法はこれから交渉するとしているが、そこに凄まじい要望が書かれていた。

1・低炭素経済への世界的転換には少なくとも年間4−6兆ドルが必要(同計画22条)である。

2・脆弱国(注・主に途上国のこと)の資金支援のニーズは2030年までに5.8−5.9兆ドル(同32条)という。

3・その資金は、増大する気候変動による影響、CO2等の排出削減と、気候変動への適応の3つの分野で必要とする。

先進国の大騒ぎを途上国が交渉で利用

つまり、この実施計画を素直に読めば、途上国は年6兆ドル(約840兆円)気候変動のため必要としており、2030年までの今後8年ではとりあえず総額6兆ドルに、減額してあげると言っている。年約1兆ドル(140兆円)いうとんでもない請求を、途上国は先進国に突きつけている。日本は縮小したと言っても、ドルベースで世界経済の8%ほどのGDP(2020年)だから、この1割程度の14兆円を払うことを求められるかもしれない。岸田政権の支持率が低下中だ。岸田首相が増税を示唆するからだ。年14兆円を気候変動対策で途上国にばら撒くことになったら、日本で政権など維持できないだろう。

ここ数年、欧州を中心に気候変動をめぐる議論が加熱化した。政治家、メディアがそれを煽った。欧州ほどの関心はなかったが、日本では菅義偉前首相が温室効果ガス抑制に意欲的で、「2050年までの炭素排出ゼロ」を掲げた。それに同調して、小泉進次郎元環境大臣や、小池百合子東京都知事など、見栄えばかり気にする軽薄な印象を持つ政治家が、気候変動と騒いだ。

気候変動問題で格好をつけすぎた結果、途上国の「責任を取れ」という声も大きくなった。その結果が、この年1兆ドル以上の巨額の請求だ。これは先進国の意識の高い人々の自業自得の面がある滑稽な姿だ。しかし、それに私たちが巻き込まれるなら、笑ってばかりはいられない。

過去の失敗を繰り返す、気候変動交渉

ここで、参考になると思うので、簡単にCOPの流れを振り返ってみよう。気候変動交渉ではCOPが始まってからこの27年、以下が繰り返された。

欧州(EU)が高めに数値目標を高めに設定する。ただし、ずるい仕掛けがある。これは共産主義の崩壊1990年を基準年にし、そこから削減目標を決める。その際に、温室効果ガスの削減が、非効率な機器の入れ替え、経済停滞で急速に減ったためだ。また、この時期にそれまでの石炭から、北海やロシアの天然ガスにエネルギーがシフト。石炭より天然ガスの方が、温室効果ガスの排出は少ない。それを利用している。

アメリカは民主党政権の際には、国際交渉では意欲的な取り決めを結ぶ。しかし米議会はそれを拒否する。共和党政権では、ブッシュ(子)、トランプの両政権は国際協定から脱退した。今回のCOP27でも、バイデン大統領と米国のケリー気候変動代表(元米民主党大統領候補)が、「シャルム・エル・シェイク実施計画」を強く押した。しかし、彼らは米国議会がそれを拒否することを分かって、ずるい行動をしている。

発展途上国は、ガス削減義務を拒否し、先進国の工業化が温暖化をもたらしたから、先進国が援助しろと騒ぐ。中東の産油国も同調する。中国は、この27年間の初期は発展途上国と自称していた。2010年ごろから、国内では全く環境対策が進んでいないのに、意欲的な目標を掲げるようになった。(多分、資金援助をしているのだろうが)国際環境NGOの多くは、中国のことを批判しないどころか褒めている。

日本はアメリカに同調するが、ハシゴを2回も外される。COP3(1997年)では京都議定書を作る主導的立場になったため、律儀に国際公約を守って大損をした。京都議定書体制は2010年に崩壊し、無駄になってしまう。それに懲りたのか、日本はCOPで派手な主張をせずに、目立たなくなった。

この状況は、今回のCOPでも繰り返されている。京都議定書体制は2010年にその後の制度が決まらずに崩壊してしまう。各国に温室効果ガスの削減目標を設定しそれを実現させようという強い拘束力を持つ仕組みだった。ところが米国が脱退、途上国への資金協力が頓挫したためだ。

そのためにできたパリ協定(2015年)は、各国が自分で削減目標を決め、それを実現させるというものだった。かなり緩いものだ。ところが、京都議定書体制を壊した一因である、途上国への資金援助問題が、再び中心テーマになってしまった。

過剰な規制で国際体制崩壊の可能性

この巨額の請求は、どうせ先進国は拒否する。私は日本が大損をしなければ成り行きに任せ、可能なら不合意による崩壊を誘えばいいと思う。米国では、緩いパリ協定さえ拒否して脱退したトランプ前大統領が、2024年に大統領選に再出馬するという。成功するかどうかわからないが、彼、もしくは共和党の他候補が大統領になったら、また米国はパリ協定とシャルム・エル・シェイク実施計画を拒否し、国際体制を平気で壊す可能性がある。

先進国と途上国がいがみ合い、南北問題が持ち込まれ、国際体制が衰退する。これは、第二次世界大戦後の世界で繰り返された。大戦後に先進国主導のWTOなど国際貿易体制づくりが進んだが、国連を通じて途上国が参加しUNCTAD(国連貿易開発会議)が始まると、米国が手を引いて国際貿易のルール作りが停滞してしまった。同じことが気候変動問題でも繰り返されるだろう。

気候変動の抑止では、国際体制の崩壊は良いことではない。しかし、日本の温室効果ガスの排出量は、世界3位の経済力と言っても6%前後。日本だけ頑張っても削減に意味がない

日本は気候変動問題での態度を曖昧にして、かっこつけないことを考えれば良い。欧州の意識高い系の言葉をコピーしているだけの小泉進次郎氏ら「意識高い系」の政治家や市民運動に、この問題で決定権を持たせないことを配慮する。自ら国際体制を壊すことはしないものの、それを維持することもしない。悪人になってはいけない。アメリカの影に隠れ、壊した責任を負わせる。経済負担を断固拒否する。

このように、かっこ悪い言葉だが「面従腹背」で、国、業界、企業、個人まで、気候変動問題でやったふりをして、様子を見続けるのが正しい行動と思える。

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