生活壊す「ステルス値上げ」、自衛策は?

石井孝明
ジャーナリスト
(写真1)値上げが家計を直撃(iStock)
(写真1)値上げが家計を直撃(iStock/SENRYU

「小さくなった」「量減った」は本当に起きている

「ステルス値上げ」という言葉を知っているだろうか。自然発生的な言葉だが、価格を据え置いて消費財の内容量を減らすものだ。それは多くの場合に秘密にされるわけではないが、積極的に告知されず隠される。誰もが最近、日本で食品を買うと「小さくなったな」「量が減ったな」と感じるだろう。それは感想ではではなく事実なのだ。

経済誌ZAITENが10月号で「大手企業「ステルス値上げ」の姑息」という記事で、30品目ほどのお菓子や冷凍食品で、各企業に、ステルス値上げ商品の値下げ状況を聞き、各企業の言い訳を記載していた。そこから数品目、ステルス値上げの事例を引用させていただく。

(余談ながら、こういうひねった、生活に密着したアイデアによる調査記事は、経済誌ではなく一般人向けを読者層にする新聞こそ書くべきだと思うのだが。取材力とアイデア力が落ちているのだろうか。)

(写真2)柿の種よ、お前もか! (亀田製菓販促ページより)
(写真2)柿の種よ、お前もか! (亀田製菓販促ページより)

 

▶︎亀田の柿の種(6袋)、亀田製菓、280円(税別) 1袋200g→190g(21年6月から)

▶︎じゃがりこサラダ、カルビー、150円前後(税別) 60g→57g(22年1月から)

▶︎カントリーマアム(バニラ&ココア)、不二家、278〜298円(税別)、20枚→19枚(22年7月)

▶︎エビ寄せフライ、味の素冷凍食品、178円(税別)、115g→110g(22年2月)

▶︎キットカットミニ、ネスレ日本、540円(税別)、14枚→13枚(22年6月)

これは一部だ。つまり今年になって、単価に直すと、食品では、値段が据え置かれてもステルス値上げで、前年で5〜10%前後値上がりしているものが数多くある。

統計では、今年初頭から円安とエネルギー価格の上昇で企業向け卸売物価の上昇が今年1月前後から5%以上、上回っているが、消費者物価指数は秋になってようやく2%を超え始めている。この時間差、そして差は、おそらくこのステルス値上げを一因とするだろう。

帝国データバンクの10月22日の発表によれば、10月の食品値上げは今年最多の6700品目、今年になって値上げされたのは10月までの累積2万665品目とされる。(プレスリリース

ステレス値上げへの自衛策は、まず知ること

このZAITENの記事は、隠す企業を、「姑息」と批判する。私もそう思うが、仕方がない面もある。こういう消費財は、すぐ使ってしまうので、「おかしいなあ」と思いながら消費者は買い続けてしまう。商品の表記は、その品質は法律や規制によって整備されているが、「量の変更」というのは細かい規定はないので法律にも反しない。

残念ながら、円安傾向とエネルギー価格の上昇で、日本での物価上昇は当面続きそうだ。日本では国債残高が膨らみすぎて、それを引き受けている日銀の債務が悪化し、日銀が金融政策で物価や金利を抑制できない。政府は財政拡大で危機を乗り越えようとしているがこれはインフレを誘発する要因だ。インフレが日本で止まるのは、世界が景気後退し、世界的に物価が下落に転じるまで、待たねばならないだろう。

消費者のステルス値上げの自衛策は、まず情報を可能な限り知ることだ。企業はステルス値上げをし続けるだろう。それを知った上で家計の許容する範囲で、買う、買わない、を選ぶ。もしくは別のものを選ぶ。消費者はこうした賢い選択をするしかない。ステルス値上げは当面続きそうだからだ。

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