総務省文書騒動の奇怪−官僚が大臣発言を捏造?

石井孝明
ジャーナリスト

言論の自由への介入? そんなことはない

総務省玄関(東京、石井撮影)

小西洋之参議院議員が引き起こした総務省文書騒動。3月10日に&ENERGY記事で「小西洋之議員の出した総務省文書の解説「無駄な騒ぎ」」で指摘したように、この文書群にそれほど意味はなく、騒ぎは馬鹿馬鹿しい。

政府を批判する「いつもの人たち」が「権力者による言論の自由の侵害だ」と、いつもの通り喚いている。変な人である小西氏と、高市早苗さんを敵視する朝日新聞は粘着行為をしている。小西氏は「法の支配と民主主義の否定です」と朝日新聞の記事を引用して騒いでいるが、何でこういう大げさな話にしているのか分からない。小西氏は無駄な混乱を引き起こしていることに自分の責任を感じ、国民に詫びるべきだ。

小西洋之氏のツイート

そもそも、これは安倍政権と官僚が、民間放送への行政介入を怖がって、政治が何もできないということを示した文書だ。そして電波帯は、国民の共有の財産だ。それを民放が好き勝手に、自分の好きなように反政府の偏向報道を行なって、政治は口を挟めない。その事実の方が問題ではないか。

また総務省は一連の文書を、3月8日に同省が作成したと認めた。国家公務員法では、「職員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」(100条)との規定があり、その漏洩のそそのかしも罪になる。これに違反するだろう。おそらく、小西氏は総務省職員から提供されたのだろうが、その職員は犯罪を犯し、小西氏の漏洩そそのかしも違法行為である。その事実を、なぜか国会もメディアも騒がない。

個人情報を記載したマイナンバーカードの普及が今、国の政策として進められている。その主たる担当は総務省だ。その役所が、堂々と省内の情報を漏洩するということは、国民にこの政策への信頼性を失わせる。

一連の無駄な騒動は早急に終わらせ、漏洩の責任を突き止めてほしい。

誰が作ったか分からない謎の文書群

ところが、事態は変な方向に転がり始めた。前述の記事で指摘した高市大臣の総務大臣時代の発言が、役人に捏造され、それが公文書に記載された可能性が出てきた。

総務省は10日、放送法の「政治的公平」に関する行政文書について、調査状況を発表した。(リンク

総務省は関係者など十数人に聞き取りをしたところ、文書を構成する全48ファイルのうち、26ファイルは現時点で作成者が確認できなかったとした。こうした作業は、担当課の課長補佐クラスが行うものだ。その人物は特定できるはずなのに、なんでわずか7−8年前に、自分が作った文書の作成を確認できないのか。おそらく、官僚が自分に都合が悪いので黙っているのだろう。

特に問題は、当時の総務大臣だった高市早苗氏、首相だった故・安倍晋三氏の関係する部分だ。高市氏は4つの文書(文末に後述)について、自分が説明を受けたことはないと明言。3月3日の参議院予算委員会で、小西氏の「それが嘘だったら議員辞職するか」の質問に「結構です」と高市氏は返事をしてしまった。返事は軽率だが、その発言に自信があったのだろう。

その4つの文書は、作成者が不明だ。そこに記載された内容が、事実かどうかの確認も総務省は3月10日時点で、できていない。

特に、後述「その2」の安倍晋三首相と高市総務大臣が電話で話したという文章は、この問題の処理方向を、首相の指示に基づいて決定したと読み取れる重大なものだ。その文書でさえ、作成者は不明だ。そのような重要な問題を、安倍首相と高市大臣が電話で話した「ようだ」と伝聞で済ませている。そんなことさえ大臣に確認できないのか。総務官僚は、上司の首相、大臣の意向さえ確認せずに、政策を進めている異常な集団ということになる。

大臣を外し、官僚が文書を捏造した可能性

この動きを見ると、総務省の役人たちが、情報通信の問題で、高市大臣を外して、内輪で問題を済まそうとしていたことはうかがえる。ただ、そこから先は不明だ。私は、大臣職は真面目にやればあまりにも仕事が多いため、高市さんが説明を失念した可能性が一番高いと思っていた。またメモ描写もかなり詳細で、高市氏が本当に言ったような臨場感があった。

ところが、ここまで調べても、高市氏に記憶にない、文書作成者もわからないということは、本当に高市氏への説明がなく、官僚が文書を捏造した可能性も出てきた。高市氏は自分へのレクを忘れるような精神状況にはないように見受けられる。

高市氏は、3月8日の参議院予算委員会で、文章に名前が出てきた大臣室参事官、情報政策担当の秘書官にも確認したが、「(安倍首相と高市大臣が会話したということは)そのような話はないと聞いた」と、説明した。また、礒崎首相補佐官の放送法への介入も「(礒崎補佐官が)放送法に興味を持っていたとか、そういったことがあったのかと聞いても、彼らも一切名前を聞いてないと言っている。私も同じだ」と答弁した。そして、自身の名前が記されている箇所について「捏造」と認識しているとの見解を、繰り返した。複数の人が言っているということは、高市氏の発言の方が正しい可能性がある。

ただし、現時点で真実は分からない。

刑事告発による問題解明が妥当

私は、前述の記事「小西洋之議員の出した総務省文書の解説「無駄な騒ぎ」」で、自民党は刑事告発して、漏洩者を突き止めてはどうかと提案した。それに加えて、新しく出てきた公文章の偽造の有無も、もし総務省が調査できないならば、刑事告発して捜査を警察か検察にしてもらったらどうかと提案したい。また名前の出ている人を、偽証罪の適用される国会の証人喚問で読んで、事実を確認してもいいだろう。

仮に、総務省の役人が政治家の発言を捏造し、行政文章にまとめていたならば、法律に私は詳しくないが、犯罪になりそうだ。自民党がしないならば、高市氏がやってもいいだろう。また小西氏も、罪に問われかねない。そしてこのようないい加減な文書を世に広めた責任も問われるべきである。

小西氏の意図とはまったく別の方向に事態は転がってしまいそうだ。総務省が、役所として大混乱してしまう、もしかしたらお縄になってしまう役人がいるかもしれない。しかし、それでも、おかしな役所をここで直したほうがいい。

(本文以上)

付記・高市氏関係の4文書

以下の文書は4つとも3月10日時点で総務省は作成者不明、事実関係の確認、精査中という。高市氏はこの4文書に記された事実がなく、「捏造」としている。

その1・高市大臣レク結果(政治的公平について)
レク日時は平成27年(2015年)2月13日(金)。以下、写真を掲載。礒崎陽輔首相補佐官の意向による放送法解釈をどのように行うかの打ち合わせたもの。ところが配布先に高市大臣、副大臣、政務官、当時自治省系だった事務次官はない。「櫻井パパ」など、旧郵政省関係の担当者のみに配られている。電波官僚が、問題を内輪で済ませようとしたことがうかがえる。

総務省文書、高市大臣レク、平成27年2月13日

その2・高市大臣と総理の電話会談の結果
聞いた日時は平成27年3月9日(月)夕刻。以下写真の掲載。総理と高市大臣が会談したもようとある。なぜ重要なことなのに、総務大臣である高市氏に、官僚は確認できないのか。

総務省文書 高市大臣と総理の会談、平成27年3月9日

その3・「大臣レクの結果について安藤局長からのデブリ模様」
聞いた日時は平成27年3月6日(金)夕刻。その1の追加文章で、高市氏が解釈変更を「本当にやるの?」と聞いたなどのやり取り。デブリとは、デブリーフィング(結果報告)という意味か。文書写真略。

その4・「山田総理秘書官からの連絡【政治的公平の件について】」
聞いた日時?は平成27年3月13日(金)17:45。高市氏から、安倍総理か、今井補佐官に電話があり、総理の意向が示されたという。文書写真略。

注・この記事の作成は3月13日朝。この日、この問題の集中審議が国会で午後にあるので、その内容を見守りたい。

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